釣り裏用語「三味線」

 対象を惑わす言動について「三味線を弾く」と言いますよね。
元々は「口三味線を弾く」という言葉で、三味線の音色をクチでマネることから、偽物、虚言を意味しているわけです。

 実際にクチの「三味線を弾いている」状態を挙げるとすれば、

 麻雀やポーカーならば、実際の「手」とは全く異なる手ができているように語って、相手を油断させたり警戒させたりするハッタリ。または、モータースポーツなんかでは、予選タイムで実力よりはるかに悪いタイム(競馬用語の「悪い時計」)を出して、ライバル社チームを油断させるという駆け引き。 これは日常のことで、決してズルくはないのです。正々堂々だとも、言えるようです。

 さて、ヘラブナ釣りです。
大会が近くなると、試釣に訪れる大会参加者達の駆け引きが行われます。
 これがもう、凄い様相を呈するのです。

 釣りにおいては、前述したような虚言癖のある人を「三味線野郎」「シャミ僧くん」と呼びますが、どんなタイプだと思いますか? 
 例えば「ダメだ、ダメだ」と声に出して舌打ちをしながら、合いそうなセッティングで、ちょっと外す様子を見せる人がいます。
 これが、高等な三味線
「三味線の弾き語り」
と呼ばれる行為です。
 もう一度言いますが、決してズルくはない、これも大人の、勝負師としての当然の行動なのです。
先ほど挙げましたとおり、他の競技でも行われる日常ですからね。

 だからと言って、試釣にてバッチリ釣り込むのも微妙なのです。
隠語で“試釣大将”“試釣番長”という悪口があるのですが、試釣で大釣りをして良いイメージに凝り固まって、本番でやられてしまうことが、たまにあります。
 やはり試釣では、すべきこと、調べることがあって、ただ、たくさん釣るだけではいけないのでしょう。

 それと、強い釣り人が大会直前に抑え気味で釣っていると「シャミっている」と言われることがあります。三味線であれば見破られている訳ですが、本命とは別なアプローチで「これはない」という確認作業だったりするので、一概には言えません。消去法の方が、後悔のない試合ができるというのが理由です。
 しかし、実際に「渋っている」ように見せるシャミもあるようですから、難しいところですけれど。

 こんな三味線の上手く弾けない人(自分の知り合いは、全員このパターン)は、釣り方が合ってしまう(見つかる)と竿をしまって、違う釣りで状況を探ります。消去法です。
 これが、もしかすると一番賢明かも知れません。
 だから釣り方が合った光景が一瞬でも見えたら、それを自分で実際に試して「本命の釣り」「対抗の釣り」を確認すべきでしょうね。相手はその釣りをいつまでも見せてくれるとは限らない訳ですし、途中から三味線を弾き出すかも知れませんし・・・。

 繰り返すのも三度目ですが、ズルくないんですよ。
憶測ですが、きっと紳士なスポーツであるゴルフとかでもあるでしょう? 三味線って。

 とにかく、個人競技ですから、大会で信じられるのはオノレのみです。
自分で試釣し、得たものを信頼するしかないのかも知れませんね。