『本格焼酎・泡盛の日』

 本日は『本格焼酎泡盛の日』でした。

そこで、こんな記事をご紹介します。

 

 

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知ったかぶりしたい「乙類焼酎の世界」 原料・製法でこれだけ違う

10/27(金) 16:00配信

週刊SPA!

 

~ビジネスマンのための一目おかれる酒知識 第11回焼酎編その2~

 ビジネスマンであれば、酒好きでなくても接待や会食で酒に親しむ機会は多いです。そして多くの人は「それなりに酒に詳しい」と思っているはず。しかし、生半可な知識、思い込みや勘違いは危険。飲み会の席で得意げに披露した知識が間違っていたら、評価はガタ落ちです。酒をビジネスマンのたしなみとして正しく楽しむために「なんとなく知っているけどモヤモヤしていた」疑問を、世界中の酒を飲み歩いた「酔っぱライター」江口まゆみがわかりやすく解説します

◆乙類焼酎の蒸留方法は1つじゃない?

 焼酎には大きく分けて2種類あり、甲類は連続式蒸留機で蒸溜した焼酎で、乙類(本格焼酎ともいう)は単式蒸留機で蒸溜した焼酎です。そして歴史的には甲類より乙類のほうが古い蒸溜技術です。

 単式蒸留の技術が、いつ頃どのように日本に伝わったかははっきりわかっていません。「生命の水」と呼ばれた蒸留酒は、8世紀頃中東からヨーロッパへ伝わり、アジアでは13~14世紀頃には製造されていたようです。

 日本への伝播については、東南アジアから琉球を経て薩摩から南九州に伝わったという「南回り説」と、中国から朝鮮を経由して壱岐から北九州に伝わったという「北回り説」があります。

 私は焼酎の源流といわれているタイやラオスで地酒の米焼酎を飲んできましたが、琉球泡盛と同じ全麹仕込みでしたし、ドラム缶を改造した蒸留機は、明治時代の「カブト釜」と呼ばれる蒸留機とそっくりでしたので、南回り説をとっています。それになにしろそのラオ・カーオという地酒は、どこか泡盛を思わせる味でしたから。

 乙類焼酎の醪(もろみ)は、一次仕込みと二次仕込みに分かれます。一次仕込みではまず麹をつくります。麦に麹菌を生やした麦麹もありますが、一般的には米麹なので、つくり方は日本酒と同じで、温かいところで48時間かけてつくります。ただ、日本酒は麹室(こうじむろ)でつくりますが、麹室がある焼酎蔵は少なく、三角棚、あるいは回転ドラムという製麹機でつくるのが一般的です。

 日本酒との違いはまだあります。麹菌が違うのです。日本酒は黄麹ですが、焼酎は白麹か黒麹を使います。もともと焼酎も黄麹を使っていましたが、暑さで醪が腐ることがよくありました。それが琉球から伝わった黒麹を使うようになると、とても容易で安全に焼酎ができることがわかったのです。

 それは醪にすると、黒麹がクエン酸をつくり出すからなのです。クエン酸には強い殺菌作用があるので、沖縄や九州など温かいところでの酒づくりに適していたというわけです。ですから焼酎の醪はとても酸っぱいです。でもこの酸っぱさは、蒸溜してしまえばお酒に含まれることはないので、焼酎の味には影響ありません。

 泡盛は今も黒麹だけでつくられていますが、現代の焼酎は一般的に白麹でつくられています。これは1920年代に河内源一郎という研究者が、黒麹菌の中から突然変異した白い麹を発見したことに端を発します。

 それまで、黒麹は胞子が蔵中に飛び散って、つくり手や蔵を汚してしまい、扱いづらさが難点でした。私も沖縄で泡盛づくりを手伝ったことがありますが、麹づくりの日は防塵マスクが与えられ、全身真っ黒になって作業したことを思い出します。

 白麹は黒麹の変異なので、クエン酸を出す性質は同じです。そこでまたたく間に白麹が焼酎づくりの主流になり、使ってみると、黒麹よりスッキリとしていて口当たりの良い焼酎になったのです。

 この麹に水と酵母を加えて発酵させるのが一次仕込みです。日本酒の酒母と同じようなものと考えて良いでしょう。

 十分に酵母が増えたところで、蒸した芋や麦、米や蕎麦などの原料を加えます。すると原料中のデンプンが糖に変わり、それが酵母によってアルコールへと発酵していきます。これが二次仕込みで、ここで使える原料は、穀類・芋類・清酒粕・黒糖以外は、酒税法で49種類の品目と決められています。

 それを見ると、カボチャや栗などはまあいいとして、タマネギや昆布、あるいはマタタビやクマザサなど、とても発酵しそうにないものまで含まれています。こういう場合はデンプン質の多い原料と一緒に使われることが多いようですが、蒸留酒なのに、飲んでみるとしっかりタマネギやクマザサの味がするのに驚かされることがあります。

 発酵後の醪はアルコール度14~20%になり、この醪を単式蒸留機で蒸溜すると、50~60%程度のアルコールが得られます。これを割り水で45%以下に調整したものが乙類焼酎で、原料からくるオリジナルな風味が生かされているのが特徴です。

 単式蒸留の乙類焼酎は、スコッチウイスキーでいうとモルトウイスキーにあたるかもしれません。そして甲類焼酎をグレーンウイスキーと考えて、甲類と乙類をブレンドした焼酎もあります。それが甲乙混和焼酎です。価格が安く、マイルドで飲みやすくなるので、飲食店のキープ用ボトルなどによく使われています。

 ところで、

「甲乙混和ではないのに、やけにスッキリしてマイルドな乙類焼酎があるな」

と思ったことはありませんか? これは減圧蒸留という方法で蒸留した焼酎です。減圧蒸留に対して通常の蒸溜を常圧蒸留といいます。

 減圧蒸溜は1970年代に登場した新しい蒸留法で、90度くらいで沸騰する常圧蒸留に対して、蒸溜機内の圧力を下げ、40~50度くらいの低温で沸騰させる方法です。高い山に登ってお湯を沸かすと、気圧が低いために低い温度で沸騰するのと同じ理屈です。

 こうすると、沸点の高いクセや臭みの原因になる成分は蒸溜されないので、雑味のない淡麗な味になります。麦焼酎いいちこ」がその代表格で、米焼酎では「白岳しろ」、黒糖焼酎では「れんと」、泡盛では「残波」などが減圧蒸留です。飲み応えという点ではイマイチですが、乙類焼酎を飲み慣れない人には好評なので、スーパーやコンビニでも買える人気銘柄となっています。

 もうひとつ、一時たいへんな人気だった麦焼酎百年の孤独」は、樫樽貯蔵といって、バーボンの樽などに一定期間寝かせています。こうした樽貯蔵の焼酎はほかにもけっこうありますが、ウイスキーやブランデーなどと比べてなんとなく色が薄いと思いませんか?

 これはウイスキーやブランデーと混同しないように、色は薄くなければいけないという酒税法の決まりがあるからです。樽貯蔵した焼酎とウイスキーなんて、色が同じでも絶対飲んだら判別できると思うのですが……。

 そういうわけで、色を薄くするため、樽に少し入れたあとはタンク貯蔵をするとか、タンク貯蔵をした同じ年代の焼酎で薄めるとか、メーカーは様々な苦労をしているようです。こうした制約がありながら、「百年の孤独」のようなヒット商品を生み出すのですから、焼酎メーカーの技術力はたいしたものですね。

 最後になりましたが、水も焼酎づくりに欠かせない原料です。蔵ごとに敷地内の井戸水などを使用するのは日本酒と同じで、これは仕込みだけでなく、度数を調整するときの割り水にも使われます。ですから、良い水のあるところに良い焼酎があるといって良いでしょう。

 乙類焼酎は原料からくる個性に加えて、麹の種類や蒸留方法によっても味わいに変化のあるバラエティに富んだお酒なのです。

【江口まゆみ】

神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学卒業。酒紀行家。1995年より「酔っぱライター」として世界中の知られざる地酒を飲み歩き、日本国内でも日本酒・焼酎・ビール・ワイン・ウイスキーの現場を100軒以上訪ねる。酒に関する著書多数。SSI認定利き酒師、JCBA認定ビアテイスター

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