フードバンク


3月24日14時16分配信 産経新聞

 ■廃棄、余剰…生活困者に提供

 「フードバンク(食べ物の銀行)」と呼ばれる活動が広がっている。品質に問題がないのに、包装の不具合などで「売り物にならない」と企業が廃棄する食品や飲料、家庭で余っている賞味期限切れ前の食品などを集め、生活困窮者に無償提供する取り組みだ。飽食の時代にあって食料を無駄にせず、社会貢献もできることから好意的な提供者も増えてきている。(頼永博朗)

 「ラベルが汚れてしまっただけの缶詰、形がふぞろいの野菜や果物など、まだ食べられる物を捨てずに提供してみませんか」

 千葉市幕張メッセで今月開催されたアジア最大級の食品・飲料専門展示会「FOODEX JAPAN 2008/第33回国際食品・飲料展」の特別講演。多くの業界関係者らを前に、フードバンク活動への協力を求める1人の米国人男性の姿があった。

 男性は、日本のフードバンクの先駆け的な存在、NPO法人セカンドハーベストジャパン」(2HJ、東京)の理事長、チャールズ・マクジルトンさん(44)。“食の祭典”を情報発信の好機ととらえ、初のブースも出展。来場者は活動内容について熱心に耳を傾けていた。

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 マクジルトンさんは平成3年、上智大学の留学生として来日。以来、東京・山谷のホームレス支援を行う中、米国で定着しているフードバンクを思い立ち、14年に2HJを設立。企業や農家などから缶詰やレトルト食品、生鮮野菜・果物、ジュース、ベビーフードなどさまざまな食品や飲料を無償で提供してもらい、仕分けして、児童養護施設や高齢者施設などへ無償で届けている。

 フードバンクは米国で約40年前に始まり、200以上の団体があるという。日本にはまだ浸透しておらず、2HJの場合、食品を提供している企業は約40社。支援企業はほとんどが外資系だ。一般家庭からの持ち込みもあり、昨年は年間約300トンの食品を集めた。提供先は首都圏を中心に全国に約130施設ある。

 数少ない日本企業のひとつ、ニチレイグループ(東京)は「食べられるのに捨てるのはもったいという考え方で提供を続けている」(広報IR部)。廃棄コストの軽減という利点も少なからずあるという。

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 女性専用フィットネスクラブを運営する「カーブスジャパン」(東京)は昨年11月、フードバンクの活動に初めて取り組んだ。会員ら約2万8000人から約50トンの食品が集まり、母子家庭の支援施設など全国300カ所に配布した。

 戦略企画部の小泉由貴子さん(33)は「『クリスマス会の料理に使うことができ、助かった』などと喜ばれた」と話す。今年秋も再び活動を計画している。

 NPO法人「フードバンク関西」(藤田治理事長、兵庫県芦屋市)は平成15年から活動を開始。また、沖縄や広島などにもフードバンクが新たに立ち上がっている。このほか、家庭の食品を学校や職場に持ち寄りフードバンクに贈る「フードドライブ」という取り組みも各地で行われている。

 2HJによると、日本では毎日、消費に耐えうる食料の3分の1が廃棄される一方で、安全で十分な栄養を含む食べ物を手に入れる「フードセキュリティー」(食料確保)に欠ける生活者は65万人以上いるという。

 「お歳暮やお中元でもらった缶詰があるが、家族では食べきれない」「特売でまとめ買いしたお菓子が余っている」…。あなたのお宅はどうですか。