カビを知る


7月6日15時1分配信 毎日新聞

 カビは5億年以上前から地球上に存在していた。現在も微生物の約4割を占め、その種類は数万種といわれる。しかも北極や南極を含め、地球上のありとあらゆる場所にいる。湿気が好きで、嫌われ者のカビだが、人間の役にも立っている。カビの功罪とは--。

 カビは、気温20~30度、湿度70%以上のところが大好き▽何かに取り付くことだけで生きていられる▽取り付いたものを分解し、成長のエネルギーにする▽集団で、速いスピードで広がっていく▽高度1万メートルくらいまで舞い上がる--など、かなりしぶとい性質を持っている。動物のふんや死がい、落ち葉などにも取り付いて分解するため、「地球の掃除係」とも呼ばれている。

 ◇みそも酒も薬も

 みそ、しょうゆ、日本酒、みりん。これらを作るのに欠かせない麹(こうじ)は、ニホンコウジカビの胞子を、米や麦、大豆などの穀物の表面につけて増やしたものだ。だし汁の材料として、日本食に欠かせないかつお節。中でも本枯れ節はカツオの肉にアオカビの一種を生やし、肉の脂肪を減らして香りと味が抜けないようにして作る。「古事記」に似たものが記されている。チーズは古くなった牛乳に微生物がついて固まったものだ。ヨーロッパでは紀元前3000年ごろから食べられている。カマンベールは白カビ、ブルーチーズはアオカビだ。

 薬もある。ニホンコウジカビが作り出すでんぷんを分解する酵素(ジアスターゼ)を、高峰譲吉博士(1854~1922年)が取り出し、消化薬「タカジアスターゼ」として売り出した。抗生物質は、カビや細菌から取り出したもので、ほかのカビや細菌の力を弱めたり、殺したりする。ペニシリン発見のきっかけは、化膿菌を培養していたシャーレにアオカビが入ってしまったことだった。化膿菌がアオカビの周りだけ生えていなかったのだ。結核に効くストレプトマイシンもカビの研究により作られた。

 カビが原因で病気にもなる。大別すると、アレルギー(ぜんそく、鼻炎、皮膚炎など)、感染症(水虫、カンジダなど)、食中毒--の三つ。すべてのカビが毒を作るのではなく、食中毒を引きおこすカビは十数種類といわれる。細菌による中毒と違い、すぐに吐き気や激しい痛みなどの症状は出ない。しかし、少しずつでもとり続けていると、がんになることもある。目に見えるカビを取り除いても、カビ毒は取り除けない。カビが生えた食べ物は、思い切って捨てた方がよい。

 ◇家の中は“楽園”

 梅雨のころ、特に気になるのが家の中のカビだ。1日数回、窓を全部開けて空気を入れ替えることが、一番のカビ予防といえる。カビの栄養となるほこりやダニを取り除くためには掃除をこまめにするとよい。浴室はカビの楽園だ。掃除のポイントは、栄養分となるせっけんかすを残さないようにする▽カビは熱に弱いため、温水シャワーで壁などを洗い流す▽換気扇を回したり窓を開けたりする。台所はカビにとっても食料庫。調理や炊飯だけでなく、洗い物などで水を使うときも換気扇を回す▽調理の時に飛んだ汁はすぐにふき取る--など、心がけたい。室内干しの洗濯物があると、湿度は10%上がる。

個人の意見
 有害でもあれば、有益な菌だったりするカビ。
でも、家の中のカビは基本的に有害だから、この時期は除菌、殺菌を心掛けます。