第3のビールで首位が2社 アサヒvsキリン“場外戦”

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3月22日10時21分配信 産経新聞

 消費者の節約志向を背景に低価格で人気の「第3のビール」の広告をめぐり、アサヒビールvsキリンビールの“場外戦”が勃発(ぼっぱつ)した。第3には税法上の分類で麦芽を使わない「その他醸造酒」と麦芽を使う「リキュール」の2つがあるが、アサヒが年明けから麦芽系で「首位」の広告を展開。これに第3全体で首位のキリンが猛反発し2月から分類別の内訳の公表を取りやめ、アサヒが首位を名乗れないようにする対抗措置に打って出たのだ。頭打ちのビール市場の中で、成長が続く第3は主戦場だけに、場外戦もヒートアップしている。

 ■首位が2社出現

 「麦の新ジャンル首位」(アサヒ)と「新ジャンル4年連続首位」(キリン)。

 第3ビールの広告は、平成20年の出荷実績をめぐり、首位を名乗る会社が2社出現する異常事態になっている。

 第3は製法や原材料によって税率が異なる酒税法を逆手にとって低価格を実現。2月の出荷量(課税ベース)は、ビール類全体が前年同月比9・2%減と落ち込む中、47・3%増と絶好調で、市場全体に占めるシェアが初めて30%を突破した。

 昨年の第3のメーカー別シェアは、首位のキリンが41・7%で、アサヒは20・9%とサントリーに次ぐ3位。にもかかわらずアサヒが、首位を名乗れるのは第3の中にも2つの分類があるためだ。

 一つは、本来のビールの原料である麦芽を一切使わず、大豆やエンドウ豆を原料とする「その他醸造酒」。もう一つが、麦芽を使った発泡酒とスピリッツなどの蒸留酒ブレンドした「リキュール」だ。

 キリンは、その他醸造酒の「のどごし〈生〉」が昨年実績で4086万ケース(1ケース=大瓶20本換算)と圧倒的なトップを誇る。一方、アサヒは「クリアアサヒ」がブランド別で2位となる1412万ケースの大ヒットを記録し、リキュール限定では首位に立った。

 ■データ公表拒否

 「アサヒが成長市場の第3のビールで首位というイメージが定着するのが怖い」

 危機感を強めたキリンは、毎月の出荷量を発表している業界団体に対し、第3の分類別内訳を開示しないという対抗措置に出た。サントリーサッポロビールもこれに同調。この結果、アサヒはリキュール分類での自社のシェアを割り出せなくなった。

 業界では、「ビール」はアサヒ、「発泡酒」と「第3」はキリンが首位という宣伝文句が定着している。細分化された分類で首位を名乗ることに問題はないが、「同じ価格帯で販売され、消費者に『第3』として定着している商品で、首位が2社あると混乱する」(関係者)との声もある。

 これに対し、アサヒは「何をやられようが、うちはうち」(関係者)と意に介さない。

 自信の裏付けとなっているのが、トレンドの変化だ。当初は主流だったその他醸造酒の第3は、麦芽特有の苦みがなく、すっきりした味わいで、若者や女性を取り込んできた。これに対し、リキュールは、麦芽を使うため、本来のビールに近い味わいが実現でき、ビール党の支持も集め、シェアを急拡大している。

 アサヒは先月3日に、その他醸造酒から撤退しリキュールに特化する方針を表明。泉谷直木常務は「(リキュール優位の)流れは変わらない」と言い切る。

 ■シェア争いの歴史

 統計データをめぐるいざこざは業界の“お家芸”でもある。

 アサヒは13年に「スーパードライ」の大躍進で、キリンを抜き、メーカー別シェアで初の業界首位に立ったが、この過程で、抜きつ抜かれつのデッドヒートが過熱。劣勢にたたされたキリンは、同年1月から、それまで毎月、公表していた出荷数量を半年ごとに変更。月別のシェアが、わからないようにした。

 その後、四半期ごとの公表に見直したが、現在、大手4社で毎月、データを公表しているのは、アサヒだけだ。

 シェア競争の激化は、値下げ合戦などを通じてメリットを受ける消費者には大歓迎。だが、メーカーにとっては、収益を圧迫する体力消耗戦につながる。

 実際、かつての“ドライ戦争”では、「出荷を水増しするためのリベートの上乗せや押し込み販売が横行し、業界の健全性が損なわれた」(大手幹部)と、自省する声が多い。

 ただ、9年連続で業界首位を死守したいアサヒと、9年ぶりの奪回が悲願のキリンにとって、成長市場の第3で譲るわけにはいかない。場外戦の過熱が、再び不毛なシェア競争につながる懸念はぬぐえない。(今井裕治、佐藤克史)


個人の意見

首位が2つ。
映画や音楽でも「全米1位」って、沢山ありますよね。