普通に安い70円のジュースが、さらに18円


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フジサンケイ ビジネスアイ 2009/6/5

 ■「激安の殿堂」 驚異の増収

 昨秋の金融危機以降、小売りの店頭で価格をめぐる風景が様変わりした。モノが売れない時代に対応しようと小売り業界は値下げ競争に身を投じ、生活防衛に走る消費者は「1円でも安いモノを」と、以前なら見向きもしなかった期限切れ商品にさえ手を伸ばす。ただ価格下落は企業の体力を奪うだけでなく、結果として所得・雇用不安や消費不振に拍車をかけかねないのも事実。底が見えない消費不況に直面し、小売り各社は戦略の巧拙が問われている。

 ◆賞味期限いとわず

 スポーツの神様として有名な東京・亀戸香取神社の近くにある、地元で人気のスーパーマーケット「サンケイスーパー」。階段を上った2階の隅にあるのが「モッタイナイ商品棚」と名付けられた名物コーナーだ。

 棚の上には70円のジュースが18円と“激安”の表示。「期限切れ」「ハンパもの」の文字とともに「品質は保証致します」「超お買得」の文字も浮かぶ。商品に明示された賞味期限を過ぎた商品を販売しているのだ。

 「賞味期限が過ぎていても、食べられるのに捨てるのはもったいない。試食して大丈夫なら出そう」。5年前に水野二三雄社長の発案でこのコーナーを設けたが、「最近は売り場で一番早く売り切れる」(水野社長)。客からは「今日はもうないの」といった問い合わせが増えている。

 4月の家計調査によると、2人以上の世帯の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で、前年同月に比べ1.3%減った。これで減少は過去最長となる14カ月連続。4月は定額給付金の支給があったため、消費者心理の指標は改善が相次いだが、実際の消費支出は下げ止まっていないことが裏付けられた。また、夏のボーナス支給額は大幅に落ち込んでおり、消費者にとって景気下げ止まりの実感はいぜんとして薄い。

 ◆狙いは主婦層

 「活きの良い魚介類を驚安でご提供!」

 こんな文字が躍るのは、ディスカウント店を運営するドン・キホーテの「MEGAドン・キホーテ三郷店」(埼玉県三郷市)の魚売り場。魚介類のほかにも精肉や野菜がズラリと並ぶ。「比べてくださいこの価格!」と、近隣の大手スーパーの価格を徹底調査し、地域一番の低価格にこだわる。

 MEGAドンキは、2007年10月に買収した総合スーパー「長崎屋」を業態転換した新業態のディスカウント型総合スーパー。通常のドン・キホーテが日用雑貨、ファッション用品などを取りそろえ、若年層を主要顧客にしているのに対し、MEGAドンキは長崎屋の中心顧客だった主婦層に照準を合わせ、食料品を主力に据える。

 担当者は「生鮮品のもうけはあまり意識して考えてはいない。狙いは集客」と打ち明ける。粗利の高い加工食品などの販売拡大につなげて利益を確保するというのが思惑だ。

 作戦は予想以上の効果をあげている。業態転換した19店舗の売上高は、いずれも前年同期比2~3倍という驚異的な増収を達成。全店が黒字転換し、開店直後の店舗などは4倍近い売り上げを記録しているところもある。値下げによって、狙い通りになじみの薄かった主婦層の取り込みに成功。「激安の殿堂」をうたう同社のまさに面目躍如といえる。

 現場の担当者は「たとえ表面上は売れていても、永続しないと思えば、商品内容から店舗の内装まで見直せるだけの機動力がある。価格も当然その一つ」と力説する。(小熊敦郎、兼松康)


個人の意見

 破壊しているのは、価格だけだろうか。


コメント用の補足・追記

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