戸田漕艇場 ボートに絡まる釣り糸、選手に刺さる針


11月29日9時4分配信 読売新聞

 「釣り禁止」の戸田漕艇場(そうていじょう)(戸田ボートコース、埼玉県戸田市)で釣り人が後を絶たず、利用する大学や実業団のボート選手ら関係者が頭を悩ませている。

 練習中の学生に釣り針が刺さる事故があったうえ、戸田競艇では釣り糸がスクリューに絡まってボートが失速するトラブルも。注意した学生に食ってかかる釣り人もおり、両者のイタチごっこが続いている。

 戸田漕艇場は、1964年の東京五輪競技会場になったボート専用コースで、全長2500メートル、幅90メートル。大学や実業団のチームが練習に使っているほか、公式大会も開かれている。コースを作る際、横を流れる荒川から水を引いたため、当初からフナやコイなどが生息し、コースの隅で糸を垂れる釣り人はいたという。

 しかし、時期は定かでないが、何者かがルアー釣りで人気のブラックバスを放してから状況が一変。投げ釣りをする人が増え、岸から数十メートル先を通るボートに当たったり、オールに絡まったりするトラブルが続出するようになったという。

 漕艇場を含む戸田公園を管理する県公園緑地協会は、人が出入りできる南側一帯に5年ほど前から「釣り禁止」の看板を掲示。職員らが見回りを行い、多い日には10人ほどの釣り人に注意することがある。

 各チームの監督・コーチも、「釣り針をコースに捨てていく者もおり、転覆した学生がケガする恐れがある」(鈴木崇司一橋大学端艇部総監督)として、今年度から見回りなどの監視強化に乗り出した。

 それにもかかわらず、5月には、カヌーの夜間練習をしていた女子学生(21)の手に釣り人が投げた針が刺さる事故が発生。針の先端に魚が抜けないようにした「返し」があったため、救急車で病院に搬送され、切開してようやく取り除いたという。この学生は「釣りをやめるよう頼むと『ふざけるな』と言われ、怖いこともある」と困惑顔だ。

 また、コース西側500メートルを使う戸田競艇では、スクリューに釣り糸が絡まったのが原因とみられるレース中の失速が、今年度だけで3件起きている。スタート地点などを示すため、水上4メートルに張ってあるワイヤに釣り糸が絡まり、針がぶら下がっていることもあるという。

 戸田競艇組合は「夜間に侵入する者もおり、すべて対処するのも難しい」と苦り切った様子だ。県ボート協会の和田卓理事長(65)は「立ち入り禁止区域の鉄柵を壊して入る者もいる。人がいるところでの投げ釣りなど非常識極まりない」と憤るが、夜釣りに来ていた東京都内の男性会社員(36)は「ボートが来たらリールを巻いて迷惑をかけないようにしている」とさおを振り続けていた。

個人の意見

>「釣りをやめるよう頼むと『ふざけるな』と言われ、怖いこともある」

 悪いことをしている“罪悪感”から逃れるために、怒りの感情を剥き出しにする人がいます。