たかしま生きもの田んぼ米


3月31日9時36分配信 産経新聞

 田ではぐくまれるのは米だけではない。生物多様性条約の締約国会議(COP10)が日本で開催される今年、生きものが暮らしやすいように配慮した「生きもの田んぼ」がいっそう共感を集めそうだ。(津川綾子)

 ◆危惧種も生き生き

 前には琵琶湖、背には山。滋賀県高島市にある「生きもの田んぼ」はにぎやかだ。

 田植えの時期はニゴロブナが産卵し、夏はナゴヤダルマガエルがぴょんぴょん跳ねる。畦(あぜ)には巨大なハッタミミズもいて、絶滅危惧(きぐ)種や希少種の楽園のようだ。それらを食べに、サギもツバメもやってくる。

 「生きもの田んぼ」の稲作スケジュールは生き物の都合が中心。この地域では、稲の根腐れを防ぐため、田から水を抜く「中干し」は6月だった。だが、生きもの田んぼでは、フナが育ち、オタマジャクシがカエルになる梅雨明けの7月末まで待つ

 生きものが嫌う除草剤など農薬や化学肥料は使わない。代わりに、田植え前の「代掻(しろか)き」を早めに行い、回数も増やした。農薬を使うより手間がかかる。

 「けれどね、水田でオタマジャクシやゲンゴロウが泳いでるのを見ると、守らないといけないって思う」と、「たかしま生きもの田んぼ米」を育てる梅村元成さん(59)は話す。

 畦を歩けば、生きものの視点に立った「バリアフリー」の工夫もある。水路と畦をつなぐ木製の小さなスロープや、水田とつなぐ魚道など。「スロープはカメやカエルの転落対策。水路に落ちてはい上がれず、爪と指のないカメが見つかったから。魚道は、エサが豊富で安全な田でフナやナマズが産卵できるように」と堀田金一郎さん(58)は説明した。

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 ◆“物語”を食べる

 農家10軒の約10ヘクタールでできた「たかしま生きもの田んぼ米」は百貨店や東京・大阪などの米穀店で、魚沼産コシヒカリ並みの値段で売られる。

 「『品質』に加え、『物語』で米のブランド価値を高める。物語のために流した汗が、食べる人に評価してもらえるようになってきた」と、梅村さんらに助言する「アミタ持続可能経済研究所」(京都市)の本多清・主任研究員は話す。

 「売りたい」と問い合わせは殺到するが、「なぜ高いか。語ってもらえる店でないと」(堀田さん)と、販路は大きくは広げない。

 平成20年から販売する「小島米店」(川崎市多摩区)の小島晃社長(56)は「田んぼで、準絶滅危惧種チュウサギ絶滅危惧種のナゴヤダルマガエルを食べている。こんな説明に『へぇー、本当?』と驚いて、お客さんがファンになる。味じゃ魚沼のコシヒカリにかなわないけど、生きものへの生産者の優しさが、支持されるんだ」。

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 ■全国で42-広がる「生きものマーク」ブランド

 「生きもの」が暮らす環境に配慮して育てられた自然の恵みに生きものの名前などをつけ、ブランド化する「生きものマーク」が、米を中心に農産物や水産物にまで広がっている。

 農林水産省の調べでは、把握しただけで全国に42の「生きものマーク」がある。同省は今月、「生きものマーク」の取り組みを広げようと、事例を集めたガイドブックを作製した。

 生きものマークには統一した認証基準はない。だが、「生きものがいるかどうかが一目瞭然(りょうぜん)の指標」とし、「人間が手を加えると自然を壊すというのがこれまでのイメージ。ところが、田んぼがコウノトリのえさ場になるなど、農林業を通じて、生きものが暮らし、生きる場所を守ることができる。それを伝えたい」と同省の佐藤大輔生物多様性保全係長は話す。

 今年10月に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)では、生物多様性に配慮した農業についても議論になる見通し。今後、生きものマークの取り組みがさらに注目を集めそうだ。

個人の意見

 野地のせせらぎがコンクリートで三面護岸され、その後に単なるドブの様になってしまった水路を数多見てきました。

 絶滅危惧種の増加を、止める策になってくれることを祈ります。