英スパークリングワイン、最優秀賞受賞に地球温暖化の恩恵


5月13日11時52分配信 ウォール・ストリート・ジャーナル

 【ディッチリング(英国)】スパークリングワインは17世紀に英国人によって発明された。だが、寒く、じめじめとした夏のせいで、英国産のブドウは質が悪く、ワインを一大産業へと発展させることはできなかった。その30年後、フランス人修道士、ドン・ペリニヨンが、このアイデアを基に魅力的なアルコール飲料を考案する。シャンパンの誕生だ。

 だが英国は今、スパークリングワインの産地としての地位を徐々に取り戻しつつある。今年1月、イタリアの権威あるワイン品評会で、ロデレールやボーリンジャー、ポメリーといった多くの著名なシャンパンを下して、英国のワイナリー「ナイティンバー・エステート」のほとんど無名のスパークリングワインが「世界最優秀スパークリングワイン賞」を受賞した。

 また、英国が昨年、20カ国・地域(G20)首脳会合を主催した際もやはり、ナイティンバーの別のスパークリングワインがオバマ米大統領や、メルケル独首相、サルコジ仏大統領などにふるまわれた。

 英国産スパークリングワインの台頭の理由の1つは、ワイン生産技術の向上だ。だがこれには、一部のワイン製造業者によると、予想もしなかった別の原因も関係しているという。地球温暖化だ。

 公式データによると、世界的にこの10年間の気温は過去最も高かった。この気温の上昇により、英国ではほぼ毎年、スパークリングワインに適した肉付きの良い、熟れたブドウが栽培できるようになった。英国ワイン生産者団体によると、2008年の英国のワイナリー数は416で、2000年の363から急増している。

 米南オレゴン大学で気候変動が世界のワイン産業に与える影響について研究を行っているグレゴリー・ジョーンズ氏は「わずか20年ほど前までは、気候が比較的涼しい土地での良質なワインの生産は非常に難しかった。だが今では、それほどでもない」と話す。

 夏が以前よりも暑くなったおかげで、「この地でスパークリングワインを生産する際のリスクが一部軽減された」と語るのは、ロンドンから70キロほど南に位置するディッチリングにあるワイナリー「リッジビュー・エステート」の創業者、マイク・ロバーツ氏だ。「われわれにはシャンパンを凌ぐシャンパンを作れる条件がそろっている」

 史上5番目の暑さを記録した昨年、リッジビューのブドウはいつもの年よりも2週間早く熟成期を迎えた。そのため、雨の多い10月になる前に、ブドウを収穫することができた。ロバーツ氏をはじめ英国のワイン生産者は、09年は生育に最も適した年の1つになったと口をそろえる。

 ワイン鑑定家のほとんどが、種類、でき、風味の点において、シャンパンに勝るスパークリングワインはないと主張する。シャンパンは、フランス北部のシャンパーニュ地方で生産されたスパークリングワインのみを指す。だが、英国のスパークリングワインも、わずかだがシャンパンに追いつきつつある。

 ロバーツ氏のワインは、フランスで開催される「世界スパークリングワイン・コンクール」の金賞や銀賞をはじめ、数々の賞を受賞している。また、リッジビューのスパークリングワイン「ブラン・ド・ブラン」は、06年のエリザベス女王の80歳祝賀パーティーの席でもふるまわれた。

 英国の多くの白ワインやロゼワインは、水っぽく、酸味が強いと言われてきた。だが、気候の温暖化とともに、ワインの質が向上し、酸味が薄れ、フルーティーさが増している。ただし、英国産の赤ワインとなると、まだまだ苦戦が続いている。赤ワイン用のブドウが程良く熟成するには、もっと暑い天候が必要なためだ。

 そのようななか、最も質が向上したのがスパークリングワインだ。以前よりも暑く、乾燥した夏の天候のおかげで、風味がより豊かで、水分の多いブドウが収穫できるようになったことと、スパークリングワインには不可欠なピリっとした酸味を得られる程度の涼しさが依然として残っていることがその理由だ。

 フランスのシャンパンの年間生産量は、約3億2000万本と、英国のスパークリングワインの140万本と比較してはるかに多い。だが今、ルイ・ロデレールやポル・ロジェ、デュヴァル・ルロワといった大手シャンパンメーカーがこぞって、ブドウ畑と彼らの新たな競合相手を視察するために英国に出向いている。

 創業1859年の老舗ワインメーカー、デュヴァル・ルロワの輸入責任者、ロジェ・ベゴールト氏は、英国産の一部のスパークリングワインは「よくできていて、おいしい」と認める。同社では数年前、ワイナリーの創業を検討するため、英国南部にスタッフを数人派遣して調査を実施したという。だが同氏は言う。「シャンパンは、やはりシャンパーニュ産でなければね!」

個人の意見

>「シャンパンは、やはりシャンパーニュ産でなければね!」

 ここまで説明して、最後に味ではなく、ブランド&地名で締めるとは(笑)。