昆虫食、ひそかなブーム

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6月5日17時41分配信 読売新聞

 昆虫人気がジワリと増している。

 飼育や標本で楽しむのではなく、食材として。確かに「ハチノコ」などは伝統食だ。おいしく健康的に料理するというが、果たしてどんなお味なのでしょうか。

 「え、これ食べるの?」。「昆虫料理試食会」が開かれた東京・阿佐ヶ谷駅前のカフェバーで5月中旬、皿に盛られた幼虫が姿を見せるとざわめきが起きた。興奮して携帯カメラで撮影を始める人もいる。

 20~30歳代中心の男女約20人が挑戦したのは「スズメバチの幼虫ドリア」「アボカドサラダ、ツムギアリとヤナギムシのドレッシング仕立て」など。メニューだけで、逃げ腰になる。

 焼き上がったドリアは、ピーマンやマッシュルームに交じって2種類の幼虫の姿が見え隠れ。ただホワイトソースが「保護色」となっているためか、皆さん口と皿を往復するスプーンの動きはなめらかだった。

 横浜市のグラフィックデザイナー、林紗也子さん(27)は「味わったことのない食感。食べられないかもと不安だったけど、ちゃんとした料理で、おいしかった。パックに詰められてスーパーで肉や魚の隣に並んでいたら買っちゃうかも」と満足そうだった。

 主催した東京都日野市の出版社勤務、内山昭一さん(59)が試食会を始めたのは、3年ほど前。口コミで人気が広がり、最近は月1回程度開くが、予約を断らざるを得ないこともあるという。

 内山さんによると、昆虫料理の鉄則は「毒などの調査で手間を惜しまず、しっかり熱を通す」こと。食品衛生責任者の資格を取り、時には英語の文献とも格闘して美食を追究。自分や仲間が郊外の山野で捕獲、「養殖」したものを中心に約60種類にのぼる虫を料理してきた。レシピにも知恵を絞る。「食卓の定番料理ならハードルも低い」と作った「蚕のさなぎカレー」「セミのチリソースあえ」は、初心者にも好評だった。

 記者も覚悟を決め、2センチほどの蚕のサナギを口に放り込んだ。ナッツと豆腐を足して2で割ったような味と食感。ミルク風味の後味。意外とイケる。

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 「蜂の子」と呼ばれるクロスズメバチの幼虫やサナギ、イナゴを食べるのは、れっきとした日本の食文化だ。世界各地の昆虫食に関する著書がある立教大文学部の野中健一教授は「世界には肉や魚より昆虫が珍重され、高値で取引される地域もある」と解説する。

 父の代から蜂の子のつくだ煮などを販売している長野県伊那市の塚原保治さん(66)は「5年間で売り上げが5割ほど増え、全国各地から注文が来る。8トンあった蜂の子やイナゴの在庫がなくなりそうだ」とうれしい悲鳴を上げる。

 「火星居住計画」という先端科学でも、昆虫食はまじめに検討されている。宇宙航空研究開発機構JAXA)で食糧計画を研究する山下雅道教授(62)は「動物性食材の有力候補は蚕。牛などの哺乳(ほにゅう)類より餌が少なくて済むし、狭い空間で飼育できる」と話す。

 研究ではサナギを玄米や大豆に混ぜ、クッキーやまんじゅうに加工した。蒸し料理や天ぷらは、英文雑誌に「カニミソや脱皮したてのカニの味」と発表したという。

 山下教授は1980年代、アメリカのスーパーで魚売り場が片隅に追いやられていた光景が忘れられない。「スシ」をはじめ日本食は今や世界的な市民権を得た。「人の思いこみなんて簡単に変わります」と山下教授。昆虫料理が垂ぜんの的、なんて日が来るかもしれない。(松田晋一郎)


個人の意見

 学生時代、毎夏、信州で過ごしていました。
もう、抵抗がありません。