三和新池=一般紙にも掲載

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夕刊フジ 2月19日(土)16時57分配信

 ヤクルトの球団史に燦然と輝く通算191勝の大エース、松岡弘さん(63)。1978年の阪急との日本シリーズでは、勝ち試合4試合に登板し球団史上初の日本一を達成した。現在は、茨城県管理釣り場「三和新池」を経営している。趣味のヘラブナ釣りが仕事になった。 (聞き手・米沢秀明)

 もともと倉敷の実家が子供相手の雑貨や釣り道具を扱う店をやっていてね。小学校に入る前から父親に連れられて川で釣りをした。角イモでコイを釣りに行ったんだ。プロに入ってからもオフの間は親父と一緒によく釣りにいったなあ。

 フナをはじめたのはプロに入ってから。マブナとかゲンゴロウブナとか、フナってこういうものなのかって感心したね。ヘラをやりだしたのは、引退してコーチになった昭和61年(86年)だった。ヤクルトの戸田球場(2軍)の球場長が好きでね。印旛沼なんかよく行ったよ。

 本格的になったのは64年(89年)にコーチを引退して、解説者の仕事を始めたころ。それから、もう趣味が高じてこんなになっちゃった。

 独立リーグ(三重)の監督を去年夏に辞めて、これからどうするかってときに、お世話になっている松浦商事(東京・立川)さんに釣り池の話をいただいた。同9月に営業権を譲り受けて、商売の右も左もわからないまま5カ月。池の周りにサツキを植えて、コンクリートや土を運んで敷地を整えたり、建物をリフォームしたり。

 ほかへ釣りにいくことはできないよ。1日中受付に座っているのが仕事だから(笑)。宿泊施設があって、ずっと泊まり込みの生活。2人の娘は嫁に行ったから、妻もパートに行ってるよ。

 ヘラブナは同じ池でも毎日釣り方、釣れ方が違う。決して難しいものではないけれど、ビギナーは簡単にいかない。やればやるほど奥が深くて頭を悩ます。毎日答えが違う。今でも何やってるんだ、俺は、ってことがよくある。要はその日、ヘラと会話ができるかどうか。できたら釣れる。

 独立リーグを辞めたのは俺のわがままだったかもしれない。でも、人間関係や金銭関係など難しい問題も多かった。野球をこんな風にしかとらえてもらえないのか、とつらい思いも。野球を捨てる間際まで行ったよ。

 そんなとき釣り池の話が決まって、まだ俺を生きさせようとしてくれている人がいる、と思えた。ちゃんとやっていれば誰かが認めてくれるもんだと思ったよ。

 商売をするには頭を下げることが必要だけど、父親の姿を見ていたから俺にはできた。我慢できる方だと思う。以前より体力はなくなったけど、まあ普通の人よりはあるだろうね。釣り場には187席あるから、終わったら掃除も大変だ。でも冬でも毎日50人ぐらいには来てもらっているからうれしいね。

 親父が亡くなったのは平成8年2月15日。俺は解説の仕事でユマ(ヤクルト元キャンプ地、米アリゾナ州)に行き、帰ろうとしていたときだった。霧が出て、経由地のロサンゼルス行きの飛行機が飛ばなくなってしまったんだ。

 1日遅れでロスについたとき、電話で妻から「お父さん亡くなったよ」と伝えられた。心筋梗塞だった。それから成田から関空へ飛んでドタバタだった。死に目に会えなかったけど、お棺に釣り具を入れてやった。親父は満鉄の工兵で肩と尻に弾が入っていて、さわるとコロコロしていた。最期に取ってやろうと思ったら、弾は酸化して小さくなって形はもうなかったなあ。母は平成19年に老衰で他界した。天寿を看取るというのはいいものだと思ったよ。

 親父は60歳のときに店を釣り具の専門店に衣替えして、投網を一日中編んでいたのを覚えている。俺も今、親父と全く同じ道を歩んでいる。やっぱり、親子なんだな。

 ■三和新池 営業時間 午前6時半(3月から6時)~午後3時半。年中無休。料金 1日2000円、半日1500円。規定・竿8~19尺、タナ第一オモリ上部より浮子止めゴムまで1m以上。駐車場、食堂あり。JR東北本線古河駅から12キロ。(電)0280・76・4440。

 ■まつおか・ひろむ 1947年7月26日、岡山県倉敷市生まれ。倉敷商三菱重工水島を経て、67年のドラフト5位でサンケイアトムズ(現ヤクルト)に入団。剛球右腕の先発として活躍した。73年に21勝を挙げ、78年に沢村賞、80年に最優秀防御率(2・35)。通算成績は191勝190敗、防御率3・33。85年に現役引退し、86-89年、03-05年にヤクルトコーチ。社会人、独立リーグ監督を経て、10年から管理釣り場「三和新池」(茨城県古河市尾崎568)の支配人。

個人の意見

 先日、リニューアルの記念イベントがあったばかりですね。



日刊ゲンダイ 6月27日(月)10時0分配信

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松岡弘さん
 通算191勝、沢村賞(78年)、最優秀防御率賞(80年)など輝かしい記録を残した元ヤクルト・スワローズのエースだった松岡弘さん。85年に引退後はコーチ、解説者など野球一筋で活躍してきた。さて、今どうしているのか。

 新宿駅から湘南新宿ライン古河駅まで約1時間。さらにそこからタクシーで田舎道を走ること20分。ようやく去年9月から松岡さんが代表を務める茨城県古河市尾崎の管理釣り場「三和新池」に着いた。
「代表といったって、釣り場の細々(こまごま)とした雑用を一手に引き受ける“名ばかり代表”だよ。去年7月に独立リーグ三重スリーアローズの監督を辞めて、さあ、これからどうしようかって思案してたとき、15年来の釣り仲間から誘われてね。もともと(出身地の)倉敷で雑貨や釣り具を売る店をやってたオヤジの影響で、釣りが唯一の趣味だったから、ふたつ返事で引き受けたってわけ」
「名ばかり代表」の日課は以下のごとし。
「朝4時半に起き、5時から釣り場を開ける準備にかかる。6時にオープンしたらお客さんに対応しながら3時半まで営業して、終わったら掃除と次の日の準備を5時くらいまで。その後は事務処理をやって、ようやく一日の仕事が終わりって感じかな。基本的に全部ひとりだろ。正直、けっこう大変だよ。食事? 朝は買い置きのパンをかじり、昼は管理事務所の中にある食堂でまかないを食べる。夜はクルマで10分の銭湯の帰りにスーパーで幕の内弁当を買って500ミリリットルの缶ビールを飲みながら適当にね」
 寝泊まりは事務所内の一室。8時にもなればバタンキューで、ナイターを見る余裕などないそうだ。これって、単身赴任オヤジの寂しい生活の典型じゃない。
「ハハハ、休みは2週間に1度、2日連続でもらってる。都内の自宅を往復するのに1日がかりだから、2日は欲しいんだ。女房は亭主元気で留守がいい、だと思うな。ここの代表を引き受けると打ち明けたときも、“あ、そう”だったし、今も“体に気をつけて”って言うぐらい。ただ、原発の影響は心配してるよ」
 ちなみに、2人の娘はすでに嫁ぎ、女の子の孫が4人いる。

●「夜はクルマで10分の銭湯の帰りにスーパーで幕の内を買って、500ミリリットルの缶ビールを飲みながら適当にね」
 さて、解説者時代は「関東ヘラブナ研究会」の会員でもあった松岡さん、現在の生活が「まったく苦にならない」のは、やっぱり釣りが大好きだからだろう。
「ボクが代表に就くに当たって、23年続いた釣り場の周りにサツキを植えたり、建物をキレイにしたり、カネかけてリニューアルしたんだ。あと、肝心の池にはヘラブナを9トン、約9000匹入れた。1トン130万円として、ヘラブナだけで1000万円かかってる計算だよ。『釣りはヘラに始まりヘラに終わる』って言葉があるくらいで、ヘラブナ釣りは奥が深く、決して簡単なもんじゃないけど、初心者や女性も足を運んでもらいたいね。ボクが懇切丁寧に教えて差し上げますよ」
 料金的には、「2000円で1日楽しめる」とか。
「これまでの1日の最高来客数は150人。それが毎日ならウハウハだけど、季節や天候に左右されてそうはいかない。少しでもその数字に近づけるよう、第二の人生をガンバるわ」

日刊ゲンダイ2011年6月24日掲載)