ミニ銀閣のスノーピーク
週プレNEWS 3月31日(木)22時6分配信
新潟県三条市に本社を置くアウトドア用品メーカーの「スノーピーク」。日本で最も売れているファミリーテント「アメニティドーム」、風に反応して光がゆらぐLEDランタン「ソリッドステートランタン ほおずき」など、ユーザー目線で開発された製品、そして“遊び心”あふれたアイデアで、世界中のユーザーから圧倒的な支持を得ているトップブランドだ。
そのスノーピークが、この春に本社を移転する。場所は同じ三条市内で、敷地面積はなんと5万坪。広大な土地の一角に社屋が建ち、それ以外はすべてキャンプ場という、大自然に囲まれたロケーションだ。「15年くらい前から考えていた」という同社の山井太社長が、そのメリットを次のように話す。
「いつも会社の横でウチの製品のユーザーさんがキャンプしていれば、よりお客さまのことを考えながら仕事ができますから。それに会社にキャンプ場があれば、『お父さんに会いに来なよ!』って子供に言えます(笑)」
「僕らの世代は、子供の頃、田んぼでザリガニを獲ったりするのって当たり前だった。そんな自然に対する“情緒感”が体にしみついているところがあるんです。すると、『LEDランタンって白く光るだけで面白くない』と感じる。それじゃ、ロウソクみたいに風で揺れいだら面白いんじゃないかと実際に作ってみると、日本人独特の“情緒感”が思いがけず海外で評価されたりする。すべてを理詰めでやっていっても“風で揺らぐLEDランタン”は生まれないですよ」
そして、なによりも「好きなこと」だからこそ、理詰めではないアイデアが生まれてくると山井社長。キャンプ場への本社移転も、誰よりも自分が「アウトドア好き」だからこそ背負えるリスクなのだとか。
「会社が安定してくると人間も会社もリスクを背負わなくなる。そうすると面白い製品もサービスもできなくなる。やっぱり人間は、好きなことをやっているときが一番生き生きとしている。もっと『オレはこれが好きだから、好きなことを仕事にします』って人が増えたほうがいい。何かを本当に好きで好きでしょうがない人にしかできないことがあるわけだから」
将来はアメリカのアウトドアメーカー「パタゴニア」の創業者イヴォン・シュイナードのように、「アルゼンチンあたりで半年くらい遊んで、アメリカに帰ってくると、文句だけ言ってすぐいなくなっちゃう。10年後にはそうなりたいですね」という山井社長。
“働きすぎ”の日本のサラリーマンにとって、学ぶべきことが多い「スノーピーク」の社風だ。
(写真/下城英悟)
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