アフリカでザリガニ繁殖、固有種に危機
ケニアのナイバシャ湖でアメリカザリガニが繁殖している(資料写真)。
(Photograph by David Keith Jones Images of Africa Photobank/Alamy)
アメリカ南部で人気の食材「アメリカザリガニ」が、はるか遠くアフリカで繁殖している事実が判明した。天敵がいないので勢力を一気に拡大し、淡水の小魚、魚卵、軟体動物、甲殻類、水生植物を食い荒らしているという。
「ザリガニの移入で湿地の動物や植物が絶滅すると、生態系のバランスが崩れ、正しく機能しなくなってしまう」と、国際自然保護連合(IUCN)の「種のプログラム」で外来種部門のグローバル・コーディネーターを務めるジェフリー・ハワード氏は語る。
◆“おいしい”侵略者
ケニアのナイバシャ湖産は、病気が原因で固有種が絶滅したスカンジナビアに輸出された。「ザリガニはまだ脅威とは認識されていないが、ナイバシャ湖の漁業に確実に影響を及ぼしている。魚卵や幼魚が狙われており、今後は漁獲量が減るかもしれない」とIUCNのハワード氏。
国際農業生物化学センター(CABI:Centre for Agricultural Bioscience International)のアーン・ウィット(Arne Witt)氏は、「ザリガニ商売で潤っている人もいるが、にわか景気で先行きは暗い。繁殖力が強く急激に増加する反面、エサを食い尽くせば激減する」とコメントする。同氏は、アフリカ支部で外来種部門のコーディネーターを務めている。
しかし、アースダム(土堰堤)や河川、湖沼の岸辺に巣穴を掘るため、地域のインフラや景観に被害が出ている。用水路の水漏れ、ダムの崩壊、土手の浸食などが発生しているという。
◆歩いて移動、何でも捕食
アメリカザリガニは適応力が高く、移動能力も優れている。IUCNのハワード氏によると、陸上でも数時間生きることができるので、雨の降る夜など数キロも歩くケースがあるという。「河川の下流へ簡単に移動する。歩きや泳ぎで湖に流れ込む川をさかのぼることも可能だ。釣りエサや食用、水族館の展示用に人間が連れ出す場合もある」。
また、CABIのウィット氏によると、プランクトンから両生類まで何でも食べるため、移入先でエサが変わっても困らないという。「ザリガニが原因で多くの水生植物が姿を消した」と同氏。この雑食性が災いし、魚類や鳥類など他の捕食生物のエサも減少してしまう。
◆管理が必要
IUCNのハワード氏によると、調査資金が不足しているので、アフリカでの正確な繁殖状況を把握できていないという。小さな湖沼なら、捕獲や毒で個体数を抑制できるだろう。移動防止用のフェンスなども考えられるが、正確な分布と個体数がわからなければ効果を期待できない。
「ナイバシャ湖ではホテイアオイなどの水生雑草を刈り取れば、鳥がザリガニを捕食しやすくなる。長期的には、ザリガニ固有の病気の導入も必要となるかもしれない」とCABIのウィット氏は述べる。「さしあたり、アフリカ大陸ではザリガニの移動を食い止めるべきだ。罰則付きの法律で規制する必要がある」。
Ochieng' Ogodo in Nairobi, Kenya for National Geographic News
個人の意見
自分が子どもの頃は、アメリカザリガニの大繁殖が問題になっていました。