偶然釣った人が味わえる“クニマスの味”

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産経新聞 5月12日(日)10時0分配信


 山梨県忍野(おしの)村の県立富士湧水(ゆうすい)の里水族館でゴールデンウイーク期間中、特別企画展「クニマス成長の軌跡」を開催して人工増殖した生態を展示した。水族館に隣接する同県水産技術センター忍野支所の研究員が、現在国内唯一の生息地、西湖(富士河口湖町)で網を使ってクニマスを生け捕りにして、採卵したのが昨年1月。3月に孵化(ふか)してから大切に育て、1年が経過した。体長は15~18センチあり、立派に成長している。


 「絶滅種」だったクニマスが、京都大の中坊徹次教授らによって平成22年に西湖で発見されたことは、「平成のシーラカンス発見」などと大きく報じられた。元来、秋田県田沢湖の固有種。強酸性水流入によって田沢湖クニマスは、昭和15年に絶滅したと考えられている。それが食料量産のため、昭和10年に受精卵が西湖に移植されながら、人知れず自然孵化を繰り返し、命を繋いできた。

 企画展では体の特徴がよく似たヒメマスが泳ぐ水槽を並べて展示した。水族館飼育スタッフの亀井あいかさんは「よく尋ねられたのは、ヒメマスとクニマスの相違点。成熟したクニマスは体色が黒く変化するのですが、外見だけでは1年目の魚の区別は専門家でも難しいようですと説明してきました」と話す。

 展示されたヒメマスもはやり忍野支所で人工増殖したものだが、孵化時期はクニマスより3~4カ月早い。比べるとクニマスの方が大きく、成長が早い。忍野支所の研究員の話だと、クニマスはいけすにいても野性味が強く、人影を嫌う。ストレスを持たせないように人工飼料を与えているというが、野性味が強い分だけ、成長も早いようだ。

 展示したクニマスは、ほぼ成魚といっていいまでに成長した。このサイズになると、食べたらどんな味なのかを考える。食糧確保で各地の湖に受精卵が放流されながら、70年間以上、人の口に入ったことがないのだから、うまいかまずいかわからない。東京都出身で秋田県の魚類に詳しい杉山秀樹氏の著書「クニマス百科」(平成12年、秋田魁新報社発行)の中に、食した人たちの往時の味覚メモが記されている。「なんと不味なのだろう。だれしも一驚するだろう」あるいは「油っこさはなく、身は軟らかで、美味しかった」。味覚に関しては賛否両論である。クニマスはベニザケの陸封派生の一種といわれるのだから、食べてうまいはずだ。食べてみたいが、いつになれば市場に出回るのか。

 山梨県水産技術センター関係者によると、人工孵化に成功したクニマスが忍野支所で約700匹が飼育されている。これらが成熟して採卵が可能になるのにあと1~2年。採卵し次代が孵化して成熟するまでにさらに2~3年。数千匹あるいは数万匹のクニマスが確保されてから、2次利用の検討がされるという。そうなれば民間養殖業者に量産を依頼することにもなるが、5年以上先の話。

 “食べてみたい”のだが、いまのところ西湖でヒメマス釣りをして、偶然クニマスを釣った人だけが珍味にありつける。とはいえ、魚体だけではクニマスとヒメマスの見分けが釣り人にはできないだろうといわれている。

個人の意見

クニマスとヒメマスの見分けが釣り人にはできないだろう

 それはともかく貴重魚類保護のためとかいって、西湖が釣り禁止にならなくてよかったと思っています。