「灘」「伏見」「西条」とは一味違う「播州」の「日本酒の故郷」主張

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産経新聞 6月15日(日)20時50分配信


 昨年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界無形文化遺産に「和食」が登録され、和食に合う酒として「日本酒」も世界的な注目を集めている。そんななか、兵庫県姫路市を中心とする播州地域の酒蔵が、「日本酒のふるさと」を旗印にしてブランド力向上に乗り出している。約1300年前から伝わる製法で醸造された日本酒が再現され、実際に飲んでみると、これまでとまったく違った風味が口の中に広がり味も絶品。兵庫県といえば、神戸市灘区や西宮市の酒蔵が全国的な知名度を誇っているが、播州の酒蔵は“一味”違った独自路線で気概にあふれていた。(姫路支局 中村雅和)

 ■根拠は、1300年前の「播磨国風土記

 「日本酒のふるさと」をめぐっては、関西各地で論争がわき起こっている。

 兵庫県伊丹市奈良市はともに乾杯の際には日本酒を用いる「日本酒乾杯条例」を制定し、お互いに「清酒発祥の地」と主張し合うなど激しい“バトル”を繰り広げている。両市とも400~500年余り前の古文書を根拠にしているが、「播磨の日本酒」は約1300年前に編纂(へんさん)された「播磨国風土記」に日本酒醸造の最古の記録があると主張している。

 播磨国風土記には、「大神の御粮(みかれい)沾(ぬ)れてかび生えき。すなわち酒を醸さしめて庭酒(にわき)を献(たてまつ)りて宴(うたげ)しき(ご神前にお供えしていた米が濡(ぬ)れてしまって、麹が生えていたので、酒を醸造してお供えし、宴を行った)」と記されている。舞台と考えられている兵庫県宍粟(しそう)市の庭田神社には国造りを行った神とされる大国主が協力した神々を集め、酒を振る舞って慰労したという伝説も残っている。

 兵庫県西部の自治体で作る播磨広域連携協議会や播州に4つある酒造組合(明石、加古川、姫路、社)は、こうした記述などを根拠に「播磨は日本酒のふるさと」と訴えている。

 姫路酒造組合会長も務める田中酒造場(姫路市)の田中康博社長は「風土記の酒は、伊丹や奈良の清酒よりも原始的なもの。発祥地争いをするつもりはない」としつつ、「麹を利用して日本酒を醸すという製法は風土記の記述が最古。また、日本酒用の米として知られる山田錦は播磨で生まれ、現在でも大半を生産している。その意味では歴史的にも、現代的にも二重の意味で“ふるさと”といえると思う」と胸を張る。

 ■“いにしえの味”を目指して奮闘

 そんななか、播磨地域の4酒造組合が県工業技術センターと協力し、昨年7月から風土記に記載されている日本酒再現にも取り組んだ。

 庭田神社内の榊や供物の甘酒から、約半年間かけて麹菌や酵母菌の採取に成功。今年2月からは採取した菌を使って、田中酒造場で試験醸造が行われた。最も古く単純な手法とされる蒸した米と麹、水を一度に仕込む「一段掛け」を採用した。

 仕込みの様子を取材すると、樽の周囲にヨーグルトに似た香りが漂っていた。口に含むと、リンゴのような味や炭酸の刺激の後に強い酸味が広がる。これまで飲んできた日本酒とは明らかに異なる風味を感じた。4月には「庭酒」として商品化され、限定400本がアッという間に完売するほどの人気だった。

 田中社長によると、今回の「庭酒」の成功に手応えをつかみ、庭田神社の麹や酵母、播磨の米と水を使って、昔ながらの仕込みで日本酒を醸造する計画が播磨地域の複数の酒蔵で進行しているという。田中社長は「同じ菌を使っても、水や米の精白度合によって酒の風味は違うし、それ以上に蔵それぞれの技術によって味は変わってくる。来年にはさまざまな蔵の『庭酒』を披露できる」と自信を見せる。

 ■日本酒ブームに乗って…

 同協議会では、このほかにも旅行会社などと協力して地元の酒蔵を巡るバスツアーなどを「はりま酒文化ツーリズム」として展開。「日本酒のふるさと」としてのブランド力を高めようとしている。

 日本酒の消費量は、平成23年度の統計ではビールやワインなどに押されて、ピーク時の4割弱にまで落ち込んでいた。ところが、新興国の経済発展や欧米での「和食ブーム」に乗って、25年度の輸出量は約1万6千キロリットルと過去最高を記録した。それだけに、和食が世界無形文化遺産に登録されたことは、日本酒にとっても強力な追い風になっているのは間違いない。

 日本三大酒どころといえば、神戸市の「灘」、京都市の「伏見」、広島県の「西条」があげられ、西宮市も兵庫県内有数の酒蔵の街と知られているが、播州の酒蔵も負けてはいない。田中社長は、「酒蔵同士で切磋琢磨(せっさたくま)して“ふるさと”にふさわしい酒をこれからも作っていき、播磨の酒に注目してもらいたい」と自信をみなぎらせている。

 大の日本酒党の記者として、播州の酒蔵の奮闘を今後も追い続けたいと思う。

個人の意見

>現在の播州針は加東市東部旧東条町を中心とした地域に、幕末の嘉永年間、小寺彦兵衛翁を元祖として興りました。
>現在も培った技術と伝統を基に高品質な釣針を供給し続け、全国に播州針として広く知られています。
播州針とは | 兵庫県釣針協同組合

 自分のなかでは釣りバリの街。