マルキユーの試作「KTK」(仮称)


 庄内地域の漁師や釣り人が大手釣り餌メーカーとタッグを組み、生き餌を超える人工餌の開発に取り組んでいる。漁師にとって負担の大きい生き餌の購入・保存の手間が省けるほか、生きた餌が苦手と感じる釣り初心者にも気軽に扱ってもらえるメリットがある。再来年の市販化を見据え、庄内の海で試行を繰り返している。

 県によると、県内の海面漁業就業者数は2003年に778人だったが、13年には474人にまで減少。10年間で約40%も減った。原因の一つにあるのが餌となるエビなどの価格高騰。耐久性のある人工餌に置き換えることで▽仕掛けを引き上げるたびに餌を付け替えなくてよい▽付け替えの時間が短縮され、漁獲量が上がる▽生き餌で必要な冷蔵・冷凍などの手間が省ける―など、漁師の業務の省力化につながるという。

 これまで人工餌は、冷凍も含め生きた餌ほどの釣果が期待できなかった。漁師で釣り師でもある大竹清志さん(57)=酒田市新橋1丁目=は約2年前から、釣り餌メーカー「マルキユー」(埼玉県桶川市)が試作する「KTK」(仮称)という素材に注目。「KTK」は、魚が鋭く反応する組成の一つであるアミノ酸をポリビニルアルコールという生分解性樹脂に混ぜ込んだもの。魚の好む配合により、嗅覚が刺激され、釣果が伸びるという。また、微生物により水中で分解されることから、人体に無害なことも特徴だ。大竹さんが釣り師として同社と関わりが強かったことから、テストを始めた。

 昨年5月、大竹さんと遊漁船協同組合の関係者が、酒田沖でテストをするとイナダやヒラメなどが釣れた。人工餌研究の第一人者で、マルキユー企画部の長岡寛次長は度々庄内地方を訪れ、実際に使ってテストしている関係者から使い勝手や釣果などについて意見を聞いてきた。先月下旬、長岡次長は漁師や釣り師に「海釣りではまだまだなところもあるが、県外の川で先月にヤマメを釣ったところ、生き餌以上の当たりがあった」と手応えを語った。

 酒田市升田で毎年5月下旬に開かれる「鳥海山やわた前ノ川釣り大会」。生きた虫を餌にすることに抵抗のある初心者も参加することから、大会に協賛している同社は来年の大会で「KTK」を提供する構想があるという。長岡次長は「さおや釣り糸、漁船の装備は技術の進化で大きく変わっている。餌も原始時代の生き餌から人工餌へと変わっていかなければならない」と話している。


個人の意見

>長岡次長は漁師や釣り師に「海釣りではまだまだなところもあるが、県外の川で先月にヤマメを釣ったところ、生き餌以上の当たりがあった」と手応えを語った。

 常に、ライバルは生きエサ。