アユの伝統漁法に釣り客が怒り

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福井新聞ONLINE 9月25日(火)8時2分配信


 アユの伝統漁法「威縄(いなわ)漁」。秋の風物詩として親しまれているが、福井県九頭竜川では友釣りファンとの間で摩擦が起きている。漁に使う鉄製のくいを重機で川に打ち込む時の騒音は、アユが逃げるだけでなく釣り客にも不快感を与える。子持ちアユの一網打尽は天然アユの減少につながる―との懸念の声もある。威縄漁を行う九頭竜川中部漁協は今年、トラブルを避けるよう組合員に厳しく通達したが、長年の対立関係が修復できるかは未知数だ。

 同漁協が威縄漁を解禁した9月1日朝、九頭竜川に重機が入った。幾本ものくいを打ち込み、作業しやすくしようと川底の岩を動かすため、激しいエンジン音と振動が一帯に響き渡った。

 重機の無限軌道に泥がついたままだったらしく、下流は泥水で濁った。土曜日で愛知県から遠征してきた釣り客2人は「とても釣る気になれない。もう福井には来ない」と早々にさおを畳んだ。

 静岡県の男性は「九頭竜川は雨が降ってもすぐ濁りがとれる良い川なのに、とても残念」。県内の男性は「釣り人を無視している。なぜここまでするのか」と怒りをあらわにした。

 県内で威縄漁をしているのは嶺北の5漁協。3漁協は手作業でくいを打っており、重機を使っているのは九頭竜川中部漁協と、その上流の勝山市漁協。勝山市漁協では「重機は釣り客がいないときに入れており、トラブルはない」という。

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 中部漁協では、手作業で数日かかるところを1、2時間で終えられるため、重機によるくい打ちを20年ほど前から行っている。岩の移動などは現状復旧を徹底し、役員が作業の前後に確認するという。上流にある発電所の放流の関係で土、日曜は水位が低いことなどから、週末に作業を行う。

 例年、くい打ち作業の時期である9月上旬は友釣りの期間とも重なり、週末には多くの釣り客が訪れる。中部漁協によると毎年、重機に対する苦情はある。組合長が交代し新体制になった今年、付近の釣り客に重機使用を周知することなど、トラブル防止を組合員に強く指示したという。

 それでも解禁後、苦情が殺到する日があった。吉田廣秀組合長は取材に対し、一部に問題のある組合員がいるのを認めた上で「聞き入れないならもう許可を出さない」と厳格な姿勢を示した。

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 威縄漁による天然アユの減少を心配する声も目立つ。同漁協のある組合員は「昔は川に入ると長靴にアユがひっついてくるほど多かった。特に4、5年前から少なくなったようだ」と話す。

 しかし同漁協が2010、11年に民間の研究機関に依頼した同川の調査で、1平方メートル当たりのアユの数が一般的な川の倍であることを確認した。えさの不足でアユが成長できなくなるため「今年は放流量を削減したほど」(同漁協)。「アユは(威縄漁の)堰(せき)があっても慣れれば跳び越える。根こそぎ捕獲するわけではない」(同)と影響の少なさを力説する。

 それでも、県立大海洋生物資源学部の田原大輔講師は「落ちアユの捕獲が資源の減少になるのは間違いない」と指摘。重機で岩を動かすことについては「アユの増減に関わるかは一概には言えないが、自然環境保全の観点から言えば良くないこと」と警告した。

 5年ほど前に威縄漁を取りやめた小浜市の若狭河川漁協は「天然アユは魅力があるし、実際評判もいい」と、釣り客誘致の効果を話す。

 全国屈指のアユ釣りのメッカとして愛好家が集まる九頭竜川。伝統漁法を守ることは大切だが、釣り客に愛想をつかされては元も子もない。漁をする一部の組合員の在り方はもちろん、釣り客との相互理解の欠如が問題の根底にあるようだ。

個人の意見

 職漁師と、遊漁券の釣り人が同じ場所で魚を狙うと、大なり小なり何かしらの問題は避けられないでしょうね。


 ヘラブナ釣りでも漁業権のある場所で放流事業が行われると、ちょっと切ない光景を目にします。
例え、釣り人が払った遊漁料や釣り団体の資金によって放された魚群へ向かって船から網を打つ姿を見ても、それが「漁業権がある水域」であるならば仕方ないと諦めるしかありません。