『マッドマックス』はアカデミー賞を獲ることができるか


THE PAGE 2月9日(火)15時0分配信

 ジョージ・ミラー監督の渾身作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が「第88回アカデミー賞」の作品賞を含む10部門にノミネートされ話題になっている。1979年に約35万ドルという低予算で制作され、B級映画と位置づけられたアクションシリーズ。その最新作が、歴史ある「アカデミー賞」の作品賞の栄冠を手にすることはできるのだろうか……。

世界中で絶賛された『マッドマックス』最新作

 2015年5月にアメリカで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が公開されると、大迫力の逃走劇と劇中に登場するキャラクター造詣の深さから、ファンばかりではなく映画関係者、批評家たちから大絶賛の声が上がった。世界中で『マッドマックス』フィーバーが巻き起こり、世界興収3億7000万ドル超という数字を叩きだした。

 日本でも15年6月20日に公開されると、圧倒的な映像表現や「ただ行って帰ってくるだけ」というシンプルなストーリーながら、スクリーンに映し出されるキャラクターの心情や想いがにじみ出てくる演出に、多くの映画ファンが舌を巻いた。“爆音上映”や“V8上映”など上映方法も個性的でリピーターも続出した。

 映画関係者からも絶大な支持を受け、映画『進撃の巨人』の樋口真嗣監督や、『バクマン。』の大根仁監督、松江哲明監督、谷垣健治アクション監督などが絶賛コメントを寄せた。第89回キネマ旬報・外国映画ベストテンで1位になったかと思えば、映画監督としても活躍するビートたけしが審査委員長を務める「第25回東京スポーツ映画大賞」で外国作品賞を受賞するなど、読者層がまったく違うと思われる媒体で高い支持を受けたことに本作の魅力が垣間見える。


アカデミー作品賞は保守的 「ミッション・イン・ポッシブル」も“完全無視”

 では、そんな『マッドマックス 怒りのデス・ロード』だが、アカデミー賞で作品賞を受賞する可能性はあるのだろうか? 

 ハリウッド事情に詳しい映画ライターは「厳しいと思います」と即答すると、こう続ける。

 「撮影賞や音響編集賞、視覚効果賞、美術賞などは十分可能性はあると思いますが…、やはりアカデミー作品賞は保守的なイメージがあります。アクションやコメディ、下品な描写がある作品は敬遠されがちで、大ヒットしたアクション大作の『ミッション・イン・ポッシブル』シリーズなども“完全無視”されていますよね」とその理由を挙げる。

 確かに『マッドマックス』は派手なアクションに、やや下品(?)と思われる描写がある。しかし、本作は現実にノミネートされ、オスカー受賞の権利を得た。

 「興行的な部分をあまり考慮に入れないと、アカデミー賞自体の存在意義を問題視する声が上がってしまうので、近年は幅広い作品がノミネートされる傾向にはなっています。でも、あくまで作品賞でのノミネートは数合わせ的なもので……」(同映画ライター)と否定的だ。


「マッドマックス」は大穴候補!?

 その一方で「十分あり得ると思いますよ」(映画プロデューサー)という意見もある。

 「昨年の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』も映画関係者の間では、賛否がはっきりと分かれるような作品でした。『マッドマックス 怒りのデス・ロード』も絶賛する人はすごく多いですが、まったくダメという人もいる。そういう評価の振れ幅がある作品にあえて投票しようとする人もいる」と述べる。

 また、「『アカデミー賞』は純粋な作品の評価だけではなく、前哨戦とも言うべき受賞状況や、その他の賞での結果が票に反映するような“調整”が透けて見えることがあります。『ゴールデングローブ賞』(ドラマ部門)を受賞した『レヴェナント:蘇えりし者』ですが、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督は昨年『バードマン』で作品賞を受賞しています。2年連続はどうなんだろうみたいな……」と解説する。

 「厳しい」と言われているアクションというジャンルで作品賞にノミネートされたことに大きな意味があるのかもしれない。そもそも、“行って帰ってくるだけのストーリー”と読み取ったならば、重厚なドラマが好まれるアカデミー作品賞にノミネートすらされないのではないのか?

 選考委員が、映像だけでキャラクターの心情が分かる(分かったように感じられる)ドラマチックな部分を本作に見出したとしたら、ひょっとしたらひょっとするかもしれない。

 とはいえ、「やっぱり大穴という評価以上ではないですよね」(映画プロデューサー)という言葉のとおり、業界内の大方の見方として、同作はあくまで“伏兵”という位置づけにあるようだ。

 ただ、本作が作品賞にノミネートされたことで、現地時間2月28日に米ロサンゼルスで行われる今年のアカデミー賞が注目されることは間違いない。

(文責/磯部正和・映画ライター)

個人の意見

 あれほど周囲に言って回ったが、ほとんどが『マッドマックス4』を見なかった様子。
 自分は前売り券を買って観に行ったが、上映館は貸し切り状態で、すぐにレイトショーのみ的な扱いになってしまった。売店でも、パンフレット以外のマーチャンは扱いがなかった。

 この作品を面白いと感じた、自分はおかしいのか・・・

 今は「アカデミー賞」の行方を見守っている。