社屋全壊でも新酒完成 気仙沼
毎日新聞 3月30日(水)10時43分配信
宮城県・気仙沼港近くに本社を構えていた酒造会社「男山本店」が、東日本大震災から停止していた新酒の仕込みを再開し、初めての日本酒が完成した。社屋が全壊し、電気や水道も通じないまま再開にこぎつけた。避難所生活を送る社員もいる中、震災後に完成した日本酒に、同社は「気仙沼の復興のきっかけになってほしい」と期待を込めている。
同社は大正元(1912)年創業。県産米を使った「伏見男山」などの日本酒で知られている。
しかし、自宅が全壊したり家族が犠牲になった社員も多い。社長の菅原昭彦さん(49)は今春の再開をあきらめかけた。しかし、多くの被災者から「地場産業で気仙沼を元気にしてほしい」という声が寄せられ、22日に仕込みを再開した。
電気や水道、ガスも不通のままだが、井戸水でタンクを冷やし、発電機で機械を動かしてもろみを搾った。1升瓶320本分の新酒が完成し、28日にようやく瓶詰めを終えた。
残った酒かすで甘酒を作り、避難所でふるまって、古里の味で体を温めてもらおうとも考えている。菅原さんは「自分たちの仕事をすることが復興につながる」と話す。ただ、震災後に完成した酒はしばらく保管するつもりだ。「いつになるか分からない。街が元気になった時、みんなで祝杯を上げたい」【茶谷亮】
個人の意見
日本経済新聞には
>酒蔵のタンクには約1500リットルのもろみを仕込んだばかりだったが、停電の影響で温度管理に必要な冷却機が稼働しない。
>一時はもろみの廃棄も覚悟した。だが、タンクに耳をあてると発酵して気泡がはじける「プシュップシュッ」という音。音は日ごとに力強くなった。「津波に負けず、よく生きていてくれた。このもろみは気仙沼の復興を願う自分たちの希望そのもの」との思いがこみ上げた。「これだけは絶対、酒にしてみせる」
との記述があり、強い気持ちのこもった日本酒であることがうかがえる。