週刊ポスト 「生物多様性」とは、欺瞞とご都合主義の産物


NEWS ポストセブン 6月16日(木)16時5分配信

 近年、「生物多様性」というキーワードをよく耳にする。いわく、「生物の種類が年々減っている」「絶滅危惧種を守らなければいけない」……至極ごもっともに思えるこれらの主張。だが、果たしてそれは本当か? 話題の新刊『生物多様性のウソ』(小学館101新書)を著わした武田邦彦氏が、そこに潜む偽善と欺瞞を喝破する。

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 いまや「生物多様性」は先進国と途上国の利権争いとなっており、「トキがかわいそう」などと情緒的に考えている国は世界でただ日本だけなのだ。

 すでに東京ではゲンゴロウが絶滅している。ゲンゴロウさえ守れない人がトキを守ることに熱心なのは滑稽でもある。

 外来種についても同様で、日本では外来種は駆除して在来種は守るのは当たり前のことのように考えられているが、そもそも日本の生物が多様なのは、四季があり、寒い地域と暖かい地域の両方から外来種が入ってきたからである。

 日本にブラックバスが入ってきてすでに1世紀近くが経つが、この魚が嫌われるのは食べてもあまり美味しくないという理由だけである。フナより美味しくて高額で売れるのなら、喜んで繁殖させるはずである。

 このように「生物多様性」とは、欺瞞とご都合主義の産物なのだ。まず、このことを理解しなければ、本当に自然を守るとはどういうことなのかが見えてこない。弊著がこの問題を自分の頭で考える一助になればと願っている。

週刊ポスト2011年6月24日号

個人の意見

 今までにも何度か書きましたが、自分は多くの情報を収集、精査して、軽々なコメントをしないように注意しています。


 10月30日未明に国際協定が締結されたCOP10生物多様性条約第10回締約国会議)をめぐっては議論百出している。新聞等の報道では「地球上には3000万種の生物が生息し、毎年4万種が絶滅している」とし、生物の保護を訴えている。生物多様性が損なわれているのは事実ではないのか。
 
環境問題はなぜウソがまかり通るのか』の著者である武田邦彦・中部大学教授はこう指摘する。
 
「毎年4万種が絶滅しているというが、その一方で新種がどんどん誕生しているのです。しかし、毎年新種がどれだけ生まれているかを関係者は絶対いわない。

 何人かの動物学者や植物学者に話を聞いたところ、大型動物の絶滅に関しては、『間違いなく人間が関与している』と断言します。たとえばインドネシアスマトラ島では、スマトラトラと人間の数は反比例し、人が増えるほどトラは減っている。人間も大型動物の一種で、地球上ではどんどん増えているので、必然的にほかの大型動物は生きていけなくなるのです。

 一方、植物に関しては『基本的に人間は関係ない』ということです。さらに、某大学の博物学者に『毎年4万種減っている一方で、4万種ぐらいは生まれているのではないか?』と聞いたら、『実は、新種の誕生はよくわかっていないので、プラスマイナスはいい加減』と答えた。しかし、それを口に出せない雰囲気があるのです。

 生物多様性が大事だというが、では、『何万種なら適当なのか』と聞くと、専門家は口を閉ざす。いま地球上には3000万種いるが、多いのか少ないのか。

 3億年前の古生代には1000万種いて、ペルム紀(~2億5000万年前)の大絶滅で100万種に減り、その後の恐竜が栄えた中生代(~6500万年前)にまた2000万種に増えた。しかし、6500万年前に隕石が落ちて地球環境が激変し600万種に減り、その後続々と増えて現在の3000万種に到達した。地球の歴史で考えれば、現代は非常に生物種が多い時代といえます」

週刊ポスト2010年11月19日