インペリテリ
産経新聞 4月19日(木)14時58分配信
いつの時代もロック音楽の花形はギター奏者だった。ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアやカルロス・サンタナの美しくセクシーな音色や、ジェフ・ベックやマーク・ノップラーのいぶし銀のような名人芸はライブで聴衆の目を釘付けにする。
そんな彼らにとって最も競い甲斐があるのが「早弾き」だ。一聴すれば誰が一番早いかすぐに分かり、勝ち負けが明快だからだ。1960年代末のアルヴィン・リーに始まり、70年代にはリッチー・ブラックモアやエドワード・ヴァン・ヘイレン、空前のメタル・ブームだった80年代にはイングヴェイ・マルムスティーンらがテープの早回しのような超絶早弾きで激しく競い合った。
そんな時代にマルムスティーンと双璧を成した知る人ぞ知る米ギター奏者、クリス・インペリテリが在籍したバンド、インペリテリの幻のデビューアルバム「スタンド・イン・ライン」(87年)が約四半世紀ぶりに最新リマスタリング作業を経た音質向上盤として蘇った。
英のバンド、ディープ・パープルやレインボーのように、クラシック音楽の影響を受けた古典的なハード・ロックのサウンドに乗せ、フルピッキングで弾きまくる当時最速の早弾きはやはり強力。レインボーで活躍したボーカリスト、グラハム・ボネットの熱い歌声も素晴らしい。最近はこうした単純明快な早弾き奏者どころか、ヒーロー然とした人気を集めるロックギター奏者がなかなか出てこないのが寂しい。(岡田敏一)
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