産経新聞記事 珍味「ふなずし」の製造会社を見学

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産経新聞 5月28日(月)15時13分配信


 【大人の社会見学】

 独特の臭みが魅力の滋賀県特産の「ふなずし」。ひとたび口に入れると鼻をつく刺激的なにおいがする珍味だ。同県竜王町にある「鮒味(ふなちか)」は、量販店やスーパーなどに年間約3トンを卸す県内屈指のふなずし製造会社。同社の製造作業所に足を一歩踏み入れると、あの「におい」が充満する中、ほとんどの過程が手作業で行われていた。(文・濱田慎太郎)

 ◆千数百年の伝統

 ふなずしは、「すし」と名がついているが、生のネタを扱うにぎりずしと違い、米と塩を使い乳酸菌で魚を発酵させる「なれずし」の一種で、フナを材料にする。千数百年前から受け継がれている近江の郷土料理。できあがるまでは半年以上かかる。においが強いものの、病みつきになるのは、この過程で生まれたアミノ酸などのうまみ成分のせいだ。

 そんな歴史あるふなずしを製造する「鮒味」は、平成9年創業の比較的新しい会社。社長の大川秀夫さん(71)と妻の登美代さん(69)の2人で切り盛りしている。

 竜王町内の水田と民家が混在する一角に製造作業所がある。広さは約130平方メートル。中に入ると、鼻にまとわりつく酸っぱいにおいが出迎えてくれた。秀夫さんは「今の時期はまだいい方ですよ。夏場にはにおいがこもって、初めての人だったら出ていきますよ」と笑う。

 ◆手作業鮮やかに

 同社で使用するフナは3月から5月にとれる卵を持ったメス。本来は琵琶湖固有のニゴロブナと呼ばれるフナを材料にするが、鮒味では主に岡山県産のフナを使っている。秀夫さんは「最近はニゴロブナが少なくなっている。安定的にふなずしをつくるため」と説明する。

 作業はまずフナのエラを取り除くことから始まる。指でエラを取り出すが、かかる時間は1匹数秒。1日100~150匹をさばくという。

 次に電動の「うろこ取り機」を使い、手際よくうろこを落とした後、ピンセットで内臓を取り出して水洗い。続いてフナに塩をまぶし漬け込む「塩切り」の一連の工程があり、エラがあった跡の部分に塩を詰め、おけに並べる。その上からさらに塩をまぶし、落としぶたをして、重しをのせる。塩加減は重要で、ふなずしから染み出る水分量が変わり、身の引き締まり具合に差が出るという。

 ◆輝くオレンジ色

 フナがとれる時期が3~5月のため、ここまでの作業はすべてこの時期に行われる。

 夏におけから出し、塩を除く「塩抜き」をし、別のおけで米と一緒に漬け込む「本漬け」に入る。

 この本漬けで発酵し、アミノ酸などのうまみが出てくる。数カ月漬け込み、10月ごろに完成する。できあがると、発酵した米はどろどろになっている。

 鮒味では、米だけで漬け込む伝統的なつくり方のほか、米と大豆で漬け込む方法も取り入れている。こうすることで味がまろやかになるというが、米と大豆の比率は企業秘密だ。

 本漬けの後は食べやすい大きさに切り分ける。秀夫さんは包丁で薄く3ミリ間隔にそろえていった。

 オレンジ色に輝く身を味見させてもらうと、口の中に酸味と塩味、そして、くせになるあの「におい」が広がった。

 「うちのふなずしは食べたら病みつきになりますよ」。秀夫さんは自信たっぷりに語り、「ふなずしは私の人生。死ぬまでつくり続けたい」と力説した。

 ■鮒味(ふなちか) 本社は滋賀県竜王町山面35の9。事務所近くにふなずしを製造する作業所がある。見学は要相談。ふなずしの購入は鮒味のホームページから。鮒寿司ミニ2パックセット2500円(税込み)など。問い合わせは鮒味((電)0748・58・2535)。


個人の意見

 以前、といっても半年ほど前ですが、参考資料を収集して「フナ食」について調べたことがありました。

 食文化と釣りとの関わり、そして伝統漁から学べる魚の生態など、得るモノが多いテーマだと思っています。