吉川の天然ナマズからセシウム検出
産経新聞 6月1日(金)13時33分配信
福島第1原発事故を受けて埼玉県が行っている農産物の放射性物質検査で5月11日、吉川市で獲れた天然ナマズから基準値を超える放射性セシウムが検出された。しかし、捕獲が難しい天然ナマズは市場に流通しないため、危険性はほぼない。市の関係者は「よりによってなぜ吉川の天然ナマズが対象になるのか」と困惑顔だ。ナマズは市のマスコットのモチーフにもなっているだけに、イメージダウンへの懸念も広がっている。(市岡豊大)
■今も残る食文化
ナマズは身が厚く、天ぷらにすると淡泊でふっくらした食感。皮や骨ごとミンチ状にして揚げた昔ながらの「たたき」は、栄養満点で深い味わいだ。
地元の埼玉東部漁協によると、天然ナマズは警戒心が強く泥の中に隠れているためプロでも捕獲に数日かかり、「年間10匹獲れればいい方」(漁協関係者)。そのため飲食店で供されるのはほとんどが養殖物だ。
市内の老舗の一つ「糀(こうじ)家(や)」では、産地を問い合わせる電話が数件あったが、現在のところ売り上げには影響ないという。しかし、養殖ナマズの幼魚を生産する「鈴木養魚場」(加須市)は「今まで食べていた人が徐々に食べなくなる可能性はある」と心配する。
■出やすい肉食魚
県によると、食物連鎖の上位に位置する肉食魚は放射性物質の数値が高く出る傾向がある。検査対象の中で唯一小魚を主食とする天然ナマズは、もともと検出されやすい魚だったといえる。この点について県担当者は「天然ナマズは口に入ることがないため対象外にしていたが、広範囲に調べるという国の方針で検査対象に含めた」と説明する。
現在の吉川市民にとってナマズは食材というより、まちおこしのシンボル。同市の玄関口、JR吉川駅前には金色の巨大ナマズ像が“鎮座”している。また、市では平成22年、ナマズをモチーフにした「なまりん」を市のマスコットとし、PRを展開している。
地元商店関係者でつくる「よしかわなまず特産品販売会」では、せんべいやどら焼き、キーホルダーなどナマズにちなんだ商品を7店舗で販売する。松沢鈴子会長は「川魚は他にもあるのに、なぜ吉川の天然ナマズが検査対象になるのか。地元では活性化へ向けがんばっているのに」と憤る。吉川市商工課も「市全体のイメージダウンにつながりかねない」と懸念する。
個人の意見
>「鈴木養魚場」(加須市)は「今まで食べていた人が徐々に食べなくなる可能性はある」と心配する。
>プロでも捕獲に数日かかり、「年間10匹獲れればいい方」(漁協関係者
>小魚を主食とする天然ナマズは、もともと検出されやすい魚
>川魚は他にもあるのに、なぜ吉川の天然ナマズが検査対象になるのか。
>市場に出回らないのなら、あえて調べなくてもいいとは思う。
出そうなところを検査する、まるで狩り、放射線狩りのようです。