なぜ“ガソリン値下げ隊”が登場しないのか?


THE PAGE 7月15日(火)13時27分配信


ガソリンが値上がりしている。1リットル平均170円超えは目前で、2008年以来の高い水準だ。2008年は、当時野党だった民主党から「ガソリン値下げ隊」が登場し、ガソリン値下げに活発な主張を飛ばした。今回は消費税アップや物価上昇も伴い、庶民の懐により深刻なダメージを与えている。なのに、なぜ、今回はガソリン値下げの議論がほとんど聞かれないのだろうか?

「ガソリン値下げ」を訴えるのぼりが、全国あちこちではためいた。2008年のことだ。ガソリンの暫定税率の廃止を目指し、民主党は全国各地で遊説を展開。その先頭に立ったのが、同党議員でつくる「ガソリン値下げ隊」だった。ガソリン代は2008年8月には過去最高の185円(全国平均)を記録。同隊は、政権与党の自民党が道路の利権にしがみつくイメージを浮き彫りにし、国民から多くの支持を集めた。それから6年。再びガソリン高が人々の暮らしに襲いかかっている。

資源エネルギー庁によると、レギュラーガソリン店頭価格(7月7日現在)の全国平均は1リットル当たり169.7円。前週と比べ1.3円の値上がりで、上昇は11週連続だ。

このガソリン高騰の背景には、外国情勢がある。一つはウクライナ情勢。産油国のロシアから欧州への原油供給が止まる可能性が取りざたされる。さらに、同じく産油国イラクでも6月から武装組織が活動を活発化させ、原油の供給が脅かされている。また円ドル相場が2013年初頭と比べ10%ほど円安になり、輸入コストが増大。さらには、経営の厳しさが増す国内の石油元売各社やガソリンスタンドが、収支改善のために原料の上昇分を店頭価格に反映させ始めたとの指摘もある。

このガソリン価格、内訳はどうなっているのか?日本エネルギー経済研究所石油情報センターは、今年4月のガソリン価格164.3円の内訳を試算した。それによると、原油は70.5円、ガソリン税は53.8円、石油石炭税2.54円、消費税12.2円。残り『25.3円』が、業者の利益や精製や流通にかかるコスト。こうしてみると、われわれが支払うガソリン代の4割以上は税金なのだ。

しかも、石油石炭税に含まれる地球温暖化対策税は、2016年4月から0.26円上がることが決定ずみ。さらに消費税率が2015年に10%に上がれば、これもガソリン代アップの要因となる

ガソリンは生活に欠かせない物資なだけに、こうした時こそ国民が待ち望むのが、税の引き下げ議論だ。しかし、それが活発に聞かれないのはなぜか?そもそも「ガソリン値下げ隊員」だった民主党議員たちが、国会から姿を消してしまったことがある。隊長だった川内博史氏ら多数が、2012年の総選挙で軒並み落選。民主党不振の理由は、「暫定税率の廃止によるガソリン価格の引き下げ」など、2009年のマニフェストで掲げた政権公約をことごとく実行できず、国民に「裏切られた」思いを抱かせた点が大きい。

もちろん民主党政権も、暫定税率の廃止ができなかった代わりに、ガソリン高を防ぐ手立てを試みた。トリガー制度と呼ばれ、「ガソリン価格が3か月連続で1リットル160円を上回れば、暫定税率分の25.1円の課税をストップする」というもの。ところが、これも東日本大震災(2011年3月)で「復興のための予算が必要」ということで、凍結してしまった。

もはやガソリン値下げの希望はないのか。だが、国会の議論をつぶさにみると、議論が全くないわけでもない。5月27日の参議院国土交通委員会で、金子洋一議員(民主党)は「ガソリン税暫定税率分の廃止」を政府に求めた。しかし、これに対し、政府側は「国、地方の極めて厳しい財政状況や地球温暖化対策の必要性を踏まえれば、その税率の水準は引き下げるべきではない」とあっさり否定。仮に廃止すれば「約1兆3000億円の減収になる」として、廃止は論外とも言わんばかりだった。最近1か月の間に「パチンコ税」や「携帯電話税」の導入検討が報じられるなど、税収を増やすことに躍起の政府与党にとって、今ある貴重な収入源を手放す選択肢はあり得ないのだろう。

そもそも、ガソリン値下げの議論が低調なのは、民主党が2009~12年に政権につきながら値下げを実現できなかったため、今になって値下げを言いづらいからではないだろうか?党政調副会長でもある金子議員に疑問をぶつけると、「そんなことは全くない。自動車にまつわる税は、根本的に見直す予定でした。今は2008年の時のガソリン値下げ隊のような派手な動きはないが、党内では同じ問題意識は持ち続けている。報道はされていないが、主張はしていますよ」と説明。「この秋の国会には、ガソリンを安くするため何らかの議員立法を提出したいと考えています」と語った。

石油情報センターは、今後のガソリン価格の見通しについて「原油価格について下がる要因がない。良くて横ばい」とみている。ガソリン値下げの活発な議論を、国民が心待ちにする日々はしばらく続きそうだ。

(文責・坂本宗之祐)

個人の意見

>政府側は「国、地方の極めて厳しい財政状況や地球温暖化対策の必要性を踏まえれば、その税率の水準は引き下げるべきではない」とあっさり否定。仮に廃止すれば「約1兆3000億円の減収になる」として、廃止は論外とも言わんばかりだった。

民主党不振の理由は、「暫定税率の廃止によるガソリン価格の引き下げ」など、2009年のマニフェストで掲げた政権公約をことごとく実行できず、国民に「裏切られた」思いを抱かせた点が大きい。

>もちろん民主党政権も、暫定税率の廃止ができなかった代わりに、ガソリン高を防ぐ手立てを試みた。トリガー制度と呼ばれ、「ガソリン価格が3か月連続で1リットル160円を上回れば、暫定税率分の25.1円の課税をストップする」というもの。ところが、これも東日本大震災(2011年3月)で「復興のための予算が必要」ということで、凍結してしまった。


 ガソリン車に乗らない方向で、車の乗り換えだな・・・。