10月10日はさかなの幼児語「とと」にちなんだ「釣りの日」


10/7(日) 11:31配信 TOKYO FM

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「鮪」。十月十日はさかなの幼児語「とと」にちなんだ「釣りの日」。また、日本鰹鮪漁業協同組合連合会が制定した「鮪の日」でもあります。今回は、冬にかけて旬を迎える「鮪」という漢字の成り立ちを探ります。

「鮪」という漢字は、魚へんに「有」と書きますが、この「有」の旧字体は「又あう日まで」の「又」の下に「月」と書きます。
「又」は右手を、「月」はにくづき、つまり「肉」を意味します。
そこから、右手でものを枠の中に囲う様子を暗示させ、海を囲むように広く回遊するマグロの習性を表していると解く説があります。
また、多くの「肉」を身につけている、有る、ということから、魚へんに「有」の字が使われた、という説も有力。
さらに、マグロの大きさや人々への広がり具合から、マグロは魚の中の魚、「ここに魚有り」ということで、魚へんに「有」となったという大胆な説もあるようです。

東北地方から関東にかけて、太平洋沿岸地域に点在する貝塚遺跡。
そこから、マグロの骨と共に鹿の角で作った銛(もり)、釣り針などが出土しています。
外洋性のマグロが偶然沿岸に流れついたとは考えにくいため、いにしえの人々は果敢に漁へ出かけ、マグロを捕獲していたとみられています。
また、かつてマグロはおもに西日本で「シビ」と呼ばれていましたが、「死ぬ日」に通じて縁起がよくないということから呼び名が変わりました。
「マグロ」の語源は目が黒いから「眼黒(マグロ)」、あるいは船の上から姿を見ると、真っ黒な魚が泳いでいるように見えたから、ともいわれています。
漢字の成り立ちにしろ、語源にしろ、さまざまな説がある「マグロ」
日本人にとっていかに親しみ深い魚であったか、がわかります。

ではここで、もう一度「鮪」という字を感じてみてください。

江戸時代、宝暦四年版の『日本山海名産図会』には、こんな解説があります。
「凡(およそ)八月彼岸より取りはじめて、十月までのものをひれながという。十月より冬の土用までに取るを黒といいて是(これ)大(おお)い也(なり)。」
「ひれなが」は手軽に楽しめる「ビンチョウマグロ」、「黒」は最高級の味わい「ホンマグロ」のことで、秋から冬にかけてのこの時期は、マグロの旬が続きます。
味覚の秋のひと皿に、赤くつやつやと光るマグロのお刺身があれば、やっぱり心がはずむもの。
国際的な漁獲制限がかかる昨今、「ここに魚有り」の鮪を味わう幸せを、じっくりかみしめたいものです。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
ものと人間の文化史158 鮪(まぐろ)』(田辺悟/著 法政大学出版局

TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年10月6日(土)放送より)

個人の意見

>十月十日はさかなの幼児語「とと」にちなんだ「釣りの日」。

 10月10日は、1964年に東京オリンピックの開会式が行われた日で、かつて『体育の日』であり、晴れの特異日です。