地酒業界、牛耳るあの大学 清酒、焼酎など比較


1/29(火) 17:30配信

日経ビジネス
地酒業界、牛耳るあの大学 清酒、焼酎など比較 

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お酒の種類によってどんな違いがあるだろうか(イメージ、写真:shutterstock)

 150万社のビッグデータを活用し、新しい切り口や問題意識からこれまで知られなかった日本経済の姿を明らかにする――。今回のテーマは地域に根差したローカルな酒造メーカー。ビッグデータを使って分析したところ、各業界の特徴が浮かび上がった。


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 調査・分析は東京商工リサーチ(東京・千代田)と東京経済大学の山本聡准教授による共同研究の一環。データやグラフなどは東京商工リサーチの企業情報データベースに基づく。地域に密着した企業に限定するため、従業員数300人以下の会社に絞った。

 寒さが厳しさを増すなか、熱かんが恋しい季節になった。さまざまな地酒を飲み比べるのもまた、楽しいものだ。

 そんな楽しみを支えるのが、各地に根を張る酒造メーカーだが、その経営はどうなっているのだろうか。ローカルメーカーに絞るため、今回は対象とする酒造会社を従業員数を300人以下に限定したうえで清酒、焼酎+ほかの蒸留酒(以下焼酎)、地ビール、ワイン+ほかの果実酒(以下ワイン)に分けてそれぞれ分析を加えた。

 社数から見た場合、目立つのはやはり清酒メーカーの多さだ。清酒は長期的に需要が低迷しているが、現在でも約1000社が全国に点在しており、今回対象とした酒類の3分の1を占める。次いで多いのが焼酎で、以降はワイン、地ビールの順番となっている。地ビールは1994年の酒税法の改正によって解禁になったものの、清酒と比べると企業数はずっと少ない。

清酒は5社に1社が200年企業

 次いで業種ごとに社歴を中央値を比べると、清酒が140年と最も長く、平均的な会社で明治が始まって間もない時期の創業だ。社歴が最も長いのは1132年創業で秋田のメーカー。これに次ぐのが1141年創業の茨城の清酒メーカーであり、この2社は平安時代から事業を続けている。分布をみた場合、創業100年を超える会社が4社に3社を占めており、200年を超える超長寿企業も5社に1社ある。業歴の長さから地域を代表する会社となっているところが少なくない。

 焼酎も100年を超えており、これはおおむね大正に入る時期に事業をスタートしたことになる。清酒と同様に業歴の長い老舗が多いが、違いは若い会社が一定数存在すること。社数ベースで業歴が短い会社から5%をみたとき、清酒は事業を始めてから45年が境目になるのに対し、焼酎は事業を始めてから9年が境目になる。「清酒も焼酎も長い歴史を持つ業界だが、その中身は意外なほど違いがあり、興味深い」(山本准教授)。焼酎ブームのなかで一時、異業種からの参入が相次いだことなどが影響しているもようだ。

 これらに比べるとワインはぐっと短く55年。これは昭和30年代の東京オリンピックの時期と創業期が重なる。ビールはやはり平成に入ってからの事業スタートであり、平均の社歴は21年となった。お酒の種類とそれぞれのメーカーの創業期が明治、大正、昭和、平成に対応しているのは興味深い。

 次いで従業員数を中央値で比べた結果、清酒8人、焼酎10人、ワイン6人、地ビール5人の順番となった。いずれも企業規模は小さく、創業ファミリーを中心に事業を細々と受け継いでいる姿が浮かぶ。

 清酒は社員数25人までに9割の会社が入り、同じ比率では地ビールとワインが30人、焼酎が45人までとなっている。「社歴の長さと考え合わせると、特に清酒はファミリービジネスらしく成長よりも事業の継続を志向しているといえるだろう」(山本准教授)

●1人当たり売上高は焼酎がトップ

 業績面から従業員1人当たりの月間売上高を平均値で比較すると焼酎が約314万円とトップ。地ビールが2位の約266万円となり、清酒は約216万円にとどまった。もっとも少ないワインは約168万円となり、トップの焼酎と大きな差がついた。

 さらに利益率を比べると平均値では焼酎が3.6%とここでも首位。以降は清酒、ワイン、地ビールの順となった。ただし、中央値でみるとワイン、清酒地ビール、焼酎の順となる。「焼酎は売れる一方で、利益の上げ方、つまり経営には企業間格差が非常に大きい可能性がある」と山本准教授はみている。

 最後に経営者のプロフィールを比べてみよう。今回は大卒者をピックアップし、出身大学を調べてみた。


 業界のハブになっている大学

 目立つのは出身大学に東京農業大学の出身者が多いこと。清酒と焼酎ではダントツの1位となったほか、ワインでも1位となっており、酒造業界での存在感は際立っている。東農大は醸造科学科を持っていることから、この分野のファミリービジネスの後継者にとって有力な進学先であるとみられる。「卸売り、小売りも含めても東農大出身の経営者が多く、この業界のハブになっている面がある」(山本准教授)。事業の歴史が短いビールでは東農大出身者は目立たない。

 清酒、焼酎ともに2位になったのは酒造業以外も含めてファミリービジネスの子弟が少なくない慶応大学。出身大学によって業績の違いはあるのか。サンプル数の多い清酒で1人当たりの月間売上高で比べたが、東農大と慶応大で比べると差はほとんどない結果となった。

山本 聡、中沢 康彦

個人の意見

> 業績面から従業員1人当たりの月間売上高を平均値で比較すると焼酎が約314万円とトップ。地ビールが2位の約266万円となり、清酒は約216万円にとどまった。もっとも少ないワインは約168万円となり、トップの焼酎と大きな差がついた。

 こんな金額で、あれだけ量販店にペコペコして大きなサービス(大量仕入れでリベート要求に答え、そんなオマケしてるのに返品まで受けてどうする)をするんだったら、マジメで“謙虚(ここ大事。昭和仕込みの横柄な店主が存命しているなら避けるべき)”な個人の小売店へ営業回りした方がイイ。