【トレンド】カップ麺に「まぜそば」ブーム到来か! ラーメン界の大物と名店が監修、どっちがうまい?

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5月17日10時0分配信 nikkei TRENDYnet

去年くらいからラーメン業界では「まぜそば」に注目が集まっている。

とはいえ、まだ全国区とは言うほどではない。そんな中、明星食品が今年3月に発売したカップ麺「明星 美味しさ新発見 まぜそば」が、口コミなどもあって、好調な売れ行きを見せている。

 「『まぜそば』はすでに当初想定していた2倍以上を売り上げました」と明星食品マーケティング部の小山内俊哉さん。筆者の周りでも、「銀座のコンビニであっという間に売りきれた」「食べたいのに売り切れでなかなか買えない」という話を耳にした。さらに、5月7日には日清食品が「ガテン系まぜそば」を発売。タイミングからすると、明星食品の「まぜそば」に対抗したわけではなく、開発のスタートは同じくらいの時期だったと思われる。これは、カップ麺にも “まぜそばブーム”が来るということなのだろうか。

たれを絡めて食べるのが「まぜそば」味はラーメンに近く、食べ応えある麺が特徴

 そもそも、まぜそばは、「ばん麺」と呼ばれる中華料理で、たれや油を絡めて食べる麺料理がルーツ。とはいえ、日本では2006年あたりから流行の兆しが見えてきた、汁なし麺、和えそば、などと呼ばれていたジャンルの中の一つ。油そばも、この和えそばのジャンルに含まれる。ただ、最近流行のまぜそばは、味が油そばよりもラーメンに近い感じで、ニンニクや焦がし葱などを好みに応じてトッピングし、それらを太い麺と混ぜ合わせて食べるというもの。その自由なムードから、お好み焼きのラーメン版だという人もいる。

 明星食品の「まぜそば」は、ラーメンデータバンク主宰を務める“自称日本一ラーメンを食った男”大崎裕史氏の監修によるもの。もともと、明星食品では「油そば」の名店「ぶぶか」が監修したカップ麺を出していて、評判が良かったという。今回は、ラーメンデータバンクの大崎氏を監修に迎え、「汁なしそば」のジャンルで何かできないかと相談をしていたところ、出てきたのが「まぜそば」だった。

 「大崎氏のこだわりもあって、味やトッピングを決める段階でも、かなり細かく相談して作りました」と小山内さん。名店のまぜそばを研究し、それらの共通する部分を抽出した。さらに、大崎氏の「どんぶりに入っていて混ぜる」「汁がひたひたする感じ」といったこだわりにも応えるように、吸い込まれるより混ざる感じのスープにしたり、ノンフライ麺の平麺にしたりすることで、絡みやすさや太麺の食感を出した。「麺が太くてインパクトがあり、味がソース味ではなく、様々な味を混ぜ合わせて一つの味になる。そういう要素を合わせて、これが『まぜそば』なんだ、と理解をしてもらいたかった」(小山内さん)。

 名前をひらがなでシンプルに「まぜそば」としたのも、男性的なストレートさを狙うと同時に、新しいジャンルであることを分かりやすく見せるためだ。「今コンビニで新商品を定番化させることは、カップ焼きそばでもカップラーメンでも至難の業なんです」(小山内さん)。コンビニのカップ麺棚には、売れ筋の定番商品と、そのコンビニのオリジナル商品がひしめく。そこにくい込むには、ラーメンや焼きそばよりも、新しいジャンルのほうがいいという判断もあった。

明星はエビの風味とチーズのコクが特徴濃厚な味を食べ応えのある平麺がまとめる

 明星「まぜそば」の麺は、確かに太い平麺だ。麺の量は90gと大盛りサイズではないが、「食べごたえを重視した」という小山内さんの言葉通り、食い足りないという感じはなかった(筆者が歳を取ったからだろうか)。スープは豚骨醤油がベースで、隠し味にエビの風味が効かせてある。

 「このあたりはやはり、まぜそばブームの先駆けになったジャンクガレッジさんを参考にしています」と小山内さん。まぜそばとは、を考えていくと、ジャンクガレッジに近づいていくのだそうだ。トッピングは、まぜそばの名店に共通する、ガーリックチップの食感や、鰹節粉の風味を中心に、隠し味のチーズパウダーまで用いて味を特徴付けるように作っている。

 食べると、確かに今までになかった味わい。焼きそばというより、ラーメンに近いのだが、もっと良い意味でワイルドな食べ物だと思った。ガーリックの香りが濃厚で、味わいも濃厚なのに、意外にスルスルと食べられるのは、「うまい」からだろう。油分も多く、味も濃いめだが、それらを噛み応えがある平麺がうまくまとめていて食べやすいのだ。エビの風味とチーズパウダーのコクが味の決め手になっている。筆者の周囲では、女性でも深夜に仕事することが多いライターやイラストレーター、編集者などに好評だ。

「つけめん」から「まぜそば」へ“麺の進化”が新潮流を生んだ!? 

 「まぜそばは、麺が進化したからこそ出てきたメニューです」と言うのは、日清食品マーケティング部ブランドマネージャーの藤井威さん。日清食品の新製品「ガテン系まぜそば」の仕掛け人でもある。

 「ラーメンのスープを語る人は多かったですが、麺を語れる人はいなかったし、語るべき麺も少なかった」(藤井さん)。その後、自家製麺などの研究が進んだ成果として出てきたのが、「つけめん」。それがさらに進化した、麺をより美味しく食べるためのメニューが「まぜそば」なのだそうだ。麺のおいしさを味わうための極太麺。その太麺に負けないだけの味付けが必要、ということで、濃いめでトッピングを重視するものになった。「このラーメン業界で起こっている麺の進化にカップ麺も付いていければと思っていました」(藤井氏)。

 そんな時、仕事情報誌「ガテン」で汁なしめん「まぜそば」を要望する声が集まり、商品化することになったという。監修は、まぜそばブームの先駆けであり、明星の「まぜそば」にも影響を与えた「ジャンクガレッジ」。その「ジャンク」という言葉のイメージを強く打ち出したのが、「ガテン系まぜそば」というわけだ。

 「僕は、このまぜそばのようなジャンルを、“非やきそば系“と呼んでいます」(藤井さん)。油そば焼きラーメン、汁なし坦々麺、そしてさかのぼれば焼きうどんに至るまで、焼きそばではない汁なし麺のジャンルは、確かにある。この“非やきそば系”を1ジャンルとして育てていきたいという。「今回はかなりトンがった、日清らしくない商品にしました。ターゲットを特化して、そこに深く突き刺ささっていけばと思っています」(藤井さん)。実際に食べてみると、本当にインパクトが強い。分量、歯ごたえ、濃さともに強烈なのだが、食べ始めると、ついワシワシと食べてしまう。

大盛り130gの迫力が“ガテン系”見た目もジャンクで満足感高い日清

 「ガテン系まぜそば」は、パッケージからして明確なイメージを持って作り込まれている。黄色と黒を基調に、工事現場的なイメージを随所に施したパッケージは、女性客の目なんて全く気にしていない。しかもヘルメットの中に「大盛り130g」と書かれているなど、芸が細かいのだ。

 待ち時間5分は、明星と同じ。この5分かかる太麺が、「まぜそば」の「まぜそば」たる証なのだろう。5分経ったら湯切りをして、スープやトッピングを入れてかき混ぜる。「しっかり混ぜても、あんまり混ぜなくても関係なく食べられるんです。3つの小袋も、好みで量を調整して自分流のスタイルで食べるのが、この製品です」と藤井さん。スタイルを自分で選べるというのは、監修したジャンクガレッジの特徴でもある。ただ、「ガテン系まぜそば」は、ジャンクガレッジの味を再現するものではなく、飽くまでもジャンクガレッジの精神を受け継いで作った、ジャンクガレッジも太鼓判を押すオリジナルメニューなのだ。

 実際に食べると、本当に濃い。特にマヨネーズとガーリックが濃厚に麺に絡み合う様は、見ているだけでも濃さが伝わる。そして、何故か、凄い勢いで食べてしまう。麺の噛み応え、食べ応えはさすが、という感じだ。そして後を引く。カップ麺1個で、十分食事になるボリュームなのだが、食べてしばらくすると、また食べたくなる、そんな味だ。

 明星がまぜそばのいいとこ取りなら、日清はまぜそばのエッセンスをデフォルメしたものといえる。この2つを食べれば、今のまぜそばが語れてしまうのではないかというくらい、そこには「まぜそば」とは何か、の答えが並んでいる。

 「男性が、豪快に混ぜてワシワシ食べるのが、まぜそばの基本」と、両社は口を揃えて言う。それは、かつてのラーメンの姿。ラーメン、焼きそばと並ぶ新ジャンルとして、今のところ「まぜそば」は有力候補といえそうだ。

(文/納富廉邦)