開高健 釣りを始めたきっかけは運動不足


集英社雑誌ニュース 9月16日(木)10時58分配信
 名編集者にして名コピーライター、芥川賞受賞作家であり、類いまれなるルポルタージュの書き手でもあった開高健。旺盛な好奇心に従って行動する表現者はまた、大自然を相手に遊ぶ釣り人であり、食にまつわるエッセイを数多く残した美食家でもあった。今年は生誕80年となるメモリアルイヤー。今、開高健の足跡をたどってみたい。

 開高といえば、釣りで知られるが、きっかけはひょんなことからだった。

 物書きというものは原稿執筆で書斎にこもるため、どうしても運動不足になってしまう。ご多分に漏れず開高もそのひとりで、『輝ける闇』(新潮文庫)を執筆しているとき、何か月も部屋から出ない生活が続いたことで、足腰がすっかり弱ってしまった。そんなある日、釣りの連載が舞い込んだ。運動不足解消のつもりで気軽に引き受けたのだが、これがまたもののみごとにハマった。

 それからは書斎で行き詰まるたびに釣りにでかけ、その行動と施策は珠玉の作品群へと結実することになった。

 なかでも、1978年に『PLAYBOY』誌(集英社刊)で連載が始まった『オーパ!』は、当時の日本人にとってほとんど未知の土地であったアマゾンへ渡り、のべ60日にわたって釣りに興じた日々を、豊富な写真と、活力みなぎる文体で記し、釣魚紀行の大ベストセラーとなった。本書の巻頭には中国に伝わる古い諺が掲げてあるのだが、これなどはまさに開高の釣りに対する思いを言い得た至言といえるだろう。引用しておく。

 一時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。
 三日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。
 八日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。
 永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい。

 58歳という若さでこの世を去った開高健。2003年4月には開高が生前暮らした神奈川県茅ケ崎市東海岸の自宅を改装して新たに「開高健記念館」がオープンした。建物外観や書斎などは往時のままの姿で残り、邸宅内部ではさまざまな企画展示が行われ、開高の業績や人となりを伝えている。ぜひ訪れてみてほしい。入館料は無料。

【『MEN’S NON-NO』2010年10月号(9月10日発売)『人物研究 悠々として急げ 開高 健』より】

個人の意見

 とりあえず、サントリー製品を飲みながら先生の著書を読み返そうと思います。