釣具の代金に清掃費用を加算


毎日JP
毎日新聞 2010年11月19日 大阪夕刊

 釣りで海や湖の底に引っかかったルアー(疑似餌)などを回収しようと、釣り具メーカーでつくる日本釣用品工業会(東京都)は来年から、ルアーの代金に清掃費用を上乗せすることを決めた。手始めに使用量が最も多いワーム(ミミズ状の疑似餌)に1袋6円を課金し、琵琶湖などの清掃活動に充てる。工業会は年間約2000万円の収入を見込んでいる。

 ルアーはブラックバス釣りの疑似餌として国内で普及した。しかし、魚の潜む場所を狙うため、水中の水草や木などに引っかかるケースが多い。バスを釣る人の約3割が訪れる琵琶湖では、滋賀県が最盛期の03年に湖底のごみを調査したところ6分の1がルアーだった。分解されずに湖底に堆積(たいせき)してごみが増え続ける一方、ルアーの針で漁師がけがをする問題も起きている。

 課金は、工業会が各メーカーに「環境協力シール」(1枚6円)を売って商品の袋に張ってもらい、その収益でダイバーの潜水費用などを賄うもの。工業会は08年から、釣具店などが加盟する日本釣振興会(東京都)と協力し、釣り人らの募金を基に関東で水中清掃を始めた。活動を西日本にも広めるため、新たな課金制度を導入し財源にすることにした。

 工業会に加盟する国内のワームメーカー約20社のほとんどが今年10月に合意。計画を軌道に乗せ、全国で約30回の清掃活動を50回程度に増やす方針で、漁協やダイビング協会にも協力を求める。

 環境協力シールの仕組みを提案した工業会の加藤誠司理事(50)=大津市=は「まずは成功例を作ること」と期待。日本釣振興会高橋裕夫事務局長も「釣り人が主体的に環境美化に取り組むきっかけにしたい」としている。【安部拓輝、稲生陽】


 <貢献人(こうけんびと)たち>
 ◇生分解性の糸、タングステン重り 環境負荷の少ない製品を

 釣具メーカーとして約50年の実績のある「ダイワ精工」が昨年10月「グローブライド」(東久留米市)に社名変更した。製造だけでなく流通にも取り組み始め、その中で注目されるのが環境対策だ。

 釣り場をきれいにする運動や環境負荷の少ない製品の開発などのCSR(企業の社会的責任)活動は20年前から始めている。「釣り人のマナーに頼るだけでなく、環境負荷の少ない製品を作るのはメーカーとして当然のこと」(小林謙一フィッシング営業本部マーケティング部副部長)と話す。

 釣りの重りは鉛が一般的。鉛は海中に早く沈み、融点が300度と加工しやすい。一方、蒸気として体内に取り込まれると健康被害の恐れがある。鉛の代替品として有力視されているのがタングステン。比重は鉛を上回るが、融点が3400度と高く加工がしくにい。価格も鉛の通常約200円に対し、同じ機能を持つタイプが2000円もする。

 しかし、キスなどの投げ釣りをする人にとっては小さくて重いタングステンは人気が出ている。田村正己コーポレートコミュニケーション室長は「遠くまで投げられ早く海中に没するのが人気の秘密」と、他人より少しでも多く釣りたい釣り人の心理を分析する。

 また、生分解性の釣り糸も開発している。釣り糸は切れてしまうと海中のごみになるだけでなく鳥などの水辺の生物に致命的なダメージを与えかねない。ナイロン糸は半永久的に溶けないが、同社の分解する糸は理論上5年で完全になくなるという。

 これは石油由来の素材だが、細菌が分解できる。ただし、釣り人の心境は「細くて強いもの」を好むため、「シャキシャキ感がいまひとつ」という分解性の糸は普及が進まないそうだ。同社の主催する釣り大会などで提供し、その使い心地を試してもらっている。

 「日本に約1100万人いる釣り人は、環境への関心も高いはず。いずれは環境にやさしいものが普及するでしょう」(小林副部長)と期待を寄せている。【須藤晃】
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毎日新聞 2010年12月7日 地方版

個人の意見

>課金は、工業会が各メーカーに「環境協力シール」(1枚6円)を売って商品の袋に張ってもらい

 そういうシステムなのですね~。
意識しなくても協力できるのでしょうけれど、自分はあえて意識して同シールの商品を購入したいと思います。

>「日本に約1100万人いる釣り人は、環境への関心も高いはず。いずれは環境にやさしいものが普及するでしょう」(小林副部長)と期待を寄せている。


 理想は「環境に優しい、釣れる道具」です。
さらなるメーカーの研究開発によって、理想の釣具が発売されることを心から願っています。