「自転車産業は斜陽」は本当か


MONEYzine 5月21日(月)8時0分配信


■デフレ時代の勝ち組企業、自転車販売の「あさひ」

 スポーツ用や電動付を含めて、自転車を直営店(およそ260店舗)やフランチャイズ店舗、ネットなどを通して販売しているのが、株式会社「あさひ」だ。同社はオリジナル品やプライベート商品をスーパーやホームセンターに納入する事業も展開しており、知る人ぞ知る企業である。


 あさひの売上高推移はまさに、右肩上がり。06年度の売上高144億円が、11年度は355億円。この5年間でおよそ3倍の伸びである。同期間に10倍も売上高を伸ばした「モバゲー」のDeNAのような例もあるが、あさひも「デフレ時代の勝ち組企業の1社」であることはまちがいないところだ。

 あさひの直営店が、365日休日なしで営業したと仮定すれば、1店舗1日平均の売上高は27万円強。定価1万円の自転車を1日に27台売っている計算になる。

 利益率も小売業としては上位クラス。販売価格1万円の自転車に収支をたとえれば、原価は4,817円、経費は3,937円。つまり、あさひで1万円の自転車を購入したとしたら、会社の儲け(営業利益)に貢献している金額は、1,246円という計算になる。

 1万円の販売当たりの営業利益が1,000円超ということは、売上高営業利益率が10%を超えていることを意味する。あさひは、「ユニクロ」のファーストリテイリングや、靴販売のABCマートなどと同様に、高利益率を実現しているわけだ。

 ちなみに仕入は5,260円と、原価の4,817円を上回っているが、オーバー分は販売に備えた在庫分である。

 同じように自転車を販売している主要企業について、1万円の販売につきどの程度の営業利益を確保しているのか、計算してみよう。

■自転車販売各社の収益構造と従業員年間平均給与

 自転車販売業を営む主要企業は、1万円の販売につきどの程度の営業利益を確保しているのか。家電量販店のヤマダ電機ビックカメラは、それぞれ570円、326円。ホームセンターのコメリは531円、カー用品販売が主力のオートバックスセブンは507円、「アルペン自転車館」を手がけるスポーツ用品販売のアルペンは551円である。

 各社とも自転車の販売が主力とはいえないが、そこその営業利益を確保しているといっていいだろう。

 各社の従業員の年間平均給与はどうか。あさひの11年度の数値の開示はまもなくだが、人件費総額は59億7,600万円であることを明らかにしている。10年度比で11億1,600万円の増額。ただし従業員数も増加しており、平均額はこれまでと同様に400万円前後での推移だろう。

 平均給与が400万円前後というのは、ヤマダ電機ビックカメラコメリとほぼ同水準。オートバックスセブンは約700万円と、表にした6社のなかでは突出しているが、他社と比較して、従業員の平均年齢が高く、平均勤続年数も長いことが主な要因であると考えていいだろう。

■自転車産業の今後の可能性

 自転車は家庭の必需品。1台どころか、2台、3台の家庭も珍しいことではない。年間に国内ではどのくらいの台数が売れているのだろうか。

 製造しているのはパナソニックの子会社パナソニックサイクル、ブリヂストンの子会社ブリヂストンサイクルヤマハ発動機などである。かつてはパナソニック系だったミヤタサイクルは、現在は消防車などの製造が主力のモリタホールディングスの傘下に入っている。釣り用具やゴルフクラブが主力で、ダイワ精工からグローブライドに商号を変更している同社も、ロードレース用やマウンテンバイクも展開。

 存在を忘れてならないのはシマノ同社は変速機やブレーキなど、自転車部品世界トップ。グローバル化を実現している企業である。

 11年の1年間に国内向けに出荷された自転車総数は1,055万台。ただし、国内生産比率はおよそ1割。40万台を超す電動アシスト自転車などを除いた「軽快車」だけに限れば、年間の国内生産台数は55万台にとどまる。製造側から見れば、自転車産業の衰退傾向に歯止めがかかっていないのが現実のようだ。


(ビジネスリサーチ・ジャパン)

個人の意見

自転車も、釣り具で見慣れた企業名を目にしますね。