「アユモドキ」がスタジアム建設によって絶滅する恐れ

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毎日新聞 3月5日(火)15時39分配信


 京都府亀岡市の球技スタジアムの建設予定地に生息する国の天然記念物の淡水魚「アユモドキ」がスタジアム建設によって絶滅する恐れがあることが、日本魚類学会(木村清志会長、約1300人)への取材で分かった。同学会や日本生態学会近畿地区会などは近く、事業主の同府と市に計画の白紙撤回を求める要望書を提出する。誘致した市は予定地に人工の生息域を設ける予定だが、魚類学会は「効果が期待できない」と指摘している。

 アユモドキは現在、国内で同所と岡山県内2カ所の計3カ所でしか生息が確認されておらず、環境省レッドデータブックで「絶滅危惧1A類」(絶滅の危険性が極めて高い)に分類されている。

 スタジアムはサッカーJリーグの試合が可能な2万5000人規模で、建設費110億円を見込み、14年着工、16年ごろ完成を目指す。予定地はJR亀岡駅北約250メートルの水田12.8ヘクタール。同学会によると、南に隣接する曽我谷川にアユモドキの唯一の産卵地があり、稚魚は予定地内の水田や用水路を泳ぎ回って成長するという。

 市は予定地の約3.6ヘクタールをアユモドキとの「共生ゾーン」とし、人工水路などを設けて生息環境を維持する方針だが、詳細は未定で、来年度に予定地内の魚類・植物などの生態を調査し、専門家の助言を得て14年度中に保護方法を最終決定するという。同学会は「重要な生息地である農業用水路の大部分を埋め立てれば、甚大な悪影響を与える」と指摘し、共生ゾーンの効果は「市の希望的な目標に過ぎない」と要望書で批判している。

 スタジアムを巡っては、推進団体による約50万人の署名を受け、府が用地の無償提供を条件に誘致自治体を公募。京都市など5市町が立候補し、12年12月、交通の便や造成費の安さから亀岡市に決定した。

 府自然環境保全課は「本格的な環境調査はこれから。共生ゾーンで新たな産卵場所を作るなど、建設の影響が最小限になるよう学識者と検討していきたい」と説明。同学会自然保護委員長の細谷和海(ほそやかずみ)・近畿大教授(魚類学)は「共生ゾーンの効果は未知数で、十分な検討もせずに着工すれば、取り返しのつかないことになる。建設ありきの姿勢で進んでいる現計画は、国有財産であるアユモドキの存在を脅かす」と指摘している。【村田拓也】

 【ことば】アユモドキ

 体形がアユに似ていることからこの名があるが、ドジョウの仲間。口ひげとしま模様が特徴。国内で90種(うち魚類4種)の希少野生動植物種の一つで、捕獲は禁じられている。亀岡市の生息地には500~1000匹いると推定されている。

個人の意見

 人の都合などで一瞬にして壊れて失うものを、今度は取り戻そうとしたら関係者の一生が掛かってしまう。

 人が自然破壊を止められないのは、どうしてなんだろう。



毎日新聞 2013年02月18日 地方版

 国の天然記念物「ミヤコタナゴ」(コイ科の淡水魚、絶滅危惧種)の保護区となっている大田原市羽田の水路に、3月からミヤコタナゴが試験放流されることが決まった。水質悪化などから絶滅状態となっていた水路に、11年ぶりにタナゴの姿が戻る。水源の沼に飛来するハクチョウやカモに給餌自粛するなどして水質の改善に協力してきた「羽田沼白鳥を守る会」など地元関係者は「努力してきたかいがあった。次は本放流を」と喜んだ。

 試験放流は、環境省や地元保存会などで組織する協議会で決まった。3月15日と4月中旬の2回に分け、県水産試験場と羽田小学校で飼育している羽田産の遺伝子を持つタナゴを数百匹ずつ放つ。

 放流後は、生存状況、繁殖と稚魚の発生状況、タナゴが卵を産み付ける二枚貝の生息状況などを観察。課題を探って本放流を目指す。

 放流されたミヤコタナゴは、密漁の対象として狙われる懸念もあるため、個体に特殊な色づけをして、識別可能にするほか、監視カメラを設置し、巡回監視も強化する方針。

 保護区のタナゴは95年には180匹が確認されたが、その後減少を続け、02年から絶滅状態となった。

 白鳥を守る会は、06年度から給餌の制限を始め、10年度からは全面中止に踏み切るなど、水質改善に協力してきた。同会の長嶋昭夫会長(53)は「タナゴが帰ってくるのを期待して、給餌自粛してきた。努力のかいがあった。協力してくれた一般の人にも感謝したい」と述べた。羽田ミヤコタナゴ保存会の星野正枝会長(80)は「ここまできて一安心。試験放流が成功し、本放流されることを願っています」と話した。【柴田光二】