『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる73の質問』


HONZ 9月27日(金)11時21分配信


本日はHONZ金魚奨励デーである。「金魚なんか興味ないし、今後も好きにならなそう」という人にとっては全く価値のない話かもしれない。かくいう私も金魚といえばアートアクアリウム展に足を運んだものの、可愛いな~程度しか感じない人だった。


すっかり夏も終わり中秋の名月も訪れたが、個人的な話では、8月の終わりに地域の夏祭りに家族で参加してきた。出店の屋台に金魚すくいがあったので、祭りの儚さ、時の移ろい感も手伝って、一回やってみようかとトライしてみた。子供も喜ぶし、どうせやるならお父さん頑張って2匹すくったのが運のツキ。金魚をすくえば、もちろん持って帰るわけで、持って帰ったら、じゃあ水槽どうする?となるわけで、我が家では中途半端なものは即処分のルールの為、買うなら独創的な水槽を置こうと、見た目スタイリッシュなガラス製の水槽を購入した。

水槽に砂利も用意し完璧だと思っていたのだが、次の日、金魚は死んでいたのである。それも毎日一匹ずつ死んでいく。一匹50円で仲間を購入してはみたものの、仕事から帰宅する度に、連日屍が浮いているため、金魚の墓を掘るのが日課となっていた。

お金よりも心に甚大な被害を被りながら、どうすれば金魚を長生きさせる方法があるのか悪戦苦闘しながら出会ったのが本書である。

本書の魅力は、正しい飼い方により生命の危機を脱出できた点にあるのだが、それよりも金魚が言わんとする主張が理解できることだろう。実は金魚は声も判断でき、読んだ名前も覚えている。口をパクパクするだけに思える彼らの行動や習慣も、本書解説でなら「こう思っているんだろうな」という推測が成り立ち、こちらも対処するべく対話が生まれる。魚の生理・生態に基づく金魚の言い分が実に良くまとめられているのだ。

金魚が突然死んでしまうのは、新しく迎えた数日が圧倒的に多い。死因の多くは、人間でいう心臓マヒか肺炎だ。綺麗事ばかりで金魚は飼えない。金魚は丈夫な魚なので、最初の飼うタイミングさえ乗り越えればすぐ死ぬことはない。もし金魚をつかまえてきたら、まず最初の3日間は餌をあげずに様子をみよう。腸内のバクテリアが繁殖し、消化システムが稼働するのを待つのだ。新しい水には別のバクテリアがいるので、腸内バクテリアが入れ替わるまでは断食なのである。暗然たる思いから、餌をあげたいのもわかるがじっと待つ事。金魚はエサを求めてはいない、欲しいのは酸素だ。これが金魚の言い分である。

最初は逃げてばかりで寄ってこなかった金魚が、パクパクと口をあわせてすり寄ってくるようになった。正しい水かえと餌やりを経て、元気で純度の高い金魚の口パクが見れたら、死の側面ばかりを見ていた私の心はフッと軽くなった。そして私は、言葉では言い表せないキンちゃんの口パクに対して畏敬の念を覚えるのであった。これは夏祭りで偶然拾ってきた金魚という外部環境と、これまで自分が培ってきた美的感覚との内面世界が一体化した瞬間だった。そういう時、大げさな表現かもしれないが世界は静寂に満ち、物事はシンプルな愛で構成されているかのように思えてきたのだ。

この本の特徴として、飼育者と金魚との距離感を縮める方法をいくつも紹介し、金魚を身近に感じるように読者を誘導している点がある。意思疎通できれば、最初は怖くて人間の手をさけるような金魚達も、次第にすりよって元気に応えてくれるようになる。

それは頻繁な水替えだったり、手のり金魚など生活の場に溶け込ませる方法だったり、金魚の品種としての特徴の楽しみ方であったりする。そのため品種紹介と飼育ノウハウに終始する飼育本と異なり、「第一章 どうしてそんなにかわいいの?」のタイトルからも読み取れるように、金魚愛に溢れた、ある種品格さえ感じる本となっている。

水に対しての正しい知識も役に立つ。水が汚れたからといってミネラルウォーターを入れるのはやめたほうが良い。カルシウムやマグネシウムなどミネラルが入っているのは硬水だが、金魚に適しているのは軟水だ。pHも金魚にとって高すぎるものが多い。それよりも塩素を抜いた水道水を使う方が安心だ。治療方法は0.5%の塩水。酸素も重要、軽くブクブク気泡を含まないといけない。私も酸素が足りておらず、結局3匹殺してしまった。すまないキンちゃん。。

実は、金魚は元々中国で突然変異した赤いフナである。今の金魚はカラフルだが、赤でもカーマインから朱色、オレンジ色など濃淡あり、また紅白が混ざった模様や、赤白に黒が混ざった三色柄のエレガントスタイルもある。なぜか金魚通な人ほど独自の美的感覚なのか、肉瘤モリモリはかわいく感じるそうだ。私はまだ肉瘤がある金魚が好きになれないが。

挿絵のイラストは筆タッチで優雅であり、とても気にいっている。鳥獣戯画よろしく、それぞれ金魚達が踊り、歌い、病気でダウンしている様子などは個人的に非常に好みの絵で、ちまちまと時間を忘れて読むのに最適である。

金魚を飼い始めた当初は何匹も殺してしまったが、手順をしっかり守ればもっと生きながらえていただろう。私のように最後の一匹になってしまった一尾と向き合って、成長を見守りながら暮らしていく楽しみもある。はじめて金魚を飼う人や、もっと金魚を上手に飼いたい人達も勉強になる一冊。

新井 文月

個人の意見

 電池式のエアレーション・ポンプ(自作品と、市販品「ブクブク(ダイトウブク株式会社)」)を長らく愛用してきたが、今夏ドンキの情熱価格品「コンパクト・インバーター」が発売され、それが2,000円を切る値段だったので、コンセント式のエアレーション・ポンプ(最近のはハイパワーで静音、省電力)と組み合わせることにした。

 それで、ドンキにて見てみたら…


 エアレーション・ポンプだけで 790円

 なんと100円足せば、造花、バックスクリーン、ハイポ、エサ(試供品)、飼い方説明書、チューブ、水槽フタ、水槽と「水作」付き(笑)。

 そういう使い方をするつもりではなかったけれど・・・購入。

 釣り以外に観賞魚も好きだった親父の命日前に水槽が手に入ったのは、何かの思し召しかなぁ。
とりあえず佃煮にする予定だった、霞ヶ浦の生ざっこ(雑魚。活魚で流通)がウチにあったので飼い始めました。