群馬・赤城大沼の「穴釣り」解禁でワカサギが入れ食い状態! 持ち帰り規制も解除


産経新聞 2月16日(火)15時0分配信

 暖冬の影響で結氷が遅れていた群馬県前橋市の「赤城大沼」に氷が張り、2月2日午前6時に「穴釣り」が解禁された。湖面に穴を開け、釣り糸を垂らしてワカサギを狙う穴釣りは、冬の風物詩。首都圏近郊で楽しめるスポットとして、赤城大沼は人気だ。今年は暖冬で解禁が例年よりも遅れ、入れ食い状態。穴釣りシーズンとしては、東京電力福島第1原発事故後初めて持ち帰りも解禁された。多くのファンでにぎわう赤城大沼で、記者も何十年ぶり?の穴釣りに挑戦した。(前橋支局 橋爪一彦)

 氷点下10度。弱い風でも、まさに身も凍る厳しい寒さだ。待ちわびていた釣りファン約250人がさっそく氷に穴を開けてワカサギ釣りを楽しんだ。

 赤城大沼は、東京都心からでも、高速を使えば2時間弱とアクセスもいい。関東では「ワカサギ穴釣りのメッカ」と言われる。

 赤城大沼漁業協同組合の青木泰孝組合長(66)が言う。

 「暖冬で、例年だと1月初めに穴釣りが解禁になるはずだったのが、今年は1カ月ほど遅れた。今回、部分解禁となったが、やっとこの日が来たとホッとしている。多くの人にワカサギ釣りを楽しんでほしい」

 赤城大沼は5年前の福島第1原発事故をきっかけに、昨年9月まで釣った魚の持ち帰りが規制されていた。釣り客はせっかく釣ったワカサギを現場に残していかなければならなかった。今回は規制解禁以後では初めての穴釣りシーズンとなり、「お持ち帰り」は5シーズンぶりとなった。

 湖畔で旅館「青木旅館」を営む青木猛さん(52)は「原発事故の影響で客足が途絶えたとき、目の前が真っ暗になった。釣ったワカサギを持ち帰って食べるというワカサギ釣り本来の姿に戻れてホッとしている」と、つらかった当時を振り返る。

 釣り好きを自任する記者も、久しぶりに穴釣りに挑戦した。

 ダウンを重ね着し、足下は使い捨てカイロを入れた防寒バッチリのスノーブーツ、手袋は2枚重ねと寒さ対策万全で臨んだ。

 青木旅館本館で、釣り竿と仕掛け、氷に穴を開ける巨大なドリルなど一式を借りて、いざ出陣! ちなみに、費用は入漁料1日券700円、レンタルドリル1000円、竿と仕掛け一式1000円ほど。

 穴釣りは場所選びが重要だ。あらかじめ教えてもらった大沼の北側、沼尻付近に移動する。ベテラン風の釣り人に近づき、氷上に積もった雪を払いのける。

 鋭い刃先がついたドリルを凍結した湖面に突き立て、グリグリ回して穴を開ける。氷の厚さは10センチくらいはある。穴が開くと同時に割れた氷と湖水が湧き上がる。金網のついたおたまで丁寧にすくい取って準備完了だ。

 次にワカサギ釣りの仕掛けにエサのサシ(ハエの幼虫)を付けようとしたのだが、寒さで手がかじかんでエサがつけられない! 取材でやってきたテレビ局が後ろからのぞき込むようにして撮影を始め、ギャラリーが気になって余計緊張する。もたもたしているうちに風にあおられた仕掛けが絡んでしまった。

 仕掛けをどうにかほぐし、釣り始めたのはいいが、全くアタリなし。

 「ボウズだけは避けたい」祈るような気持ちで長さ30センチほどの短い釣り竿(さお)を細かく揺らし、誘いをかける。

 竿先が時折震えるがワカサギがエサを食っているのか、手の震えなのか。釣りの女神はどこに…。

 いつまでも遊んでいるわけにはいかない。

 気持ちを引き締め、取材に向かった。周辺のカタツムリのような形のビニールハウスにこもる釣り客に話を聞いて回った。

 ひと昔前のワカサギ釣りしか知らない記者(橋爪)にとって衝撃的だったのは、ハイテクを駆使した釣り方だった。

 釣り人は足下に置いた魚群探知機で群れが泳ぐ棚の深さを確認し、その棚にエサを落とし込んでワカサギを狙うのだ。探知機には群れが黒い点で表示され一目瞭然だった。

 驚いて眺めていると「魚群探知機はあたりまえ。より精度を上げるための装置を含めると7万円くらいかかったかな」と、群馬県みどり市の和田なおみさん(42)は屈託なく笑った。寒さ対策のビニールハウスがあれば寒風に凍えることなく快適な穴釣りができるという。

 足下にコンロとフライパンを置いていたのは同太田市の丸谷了司さん(63)。「36匹釣れた。赤城大沼のワカサギはおいしいからね。今日は釣ったワカサギをフライにして食べながら釣りを楽しみますよ」と笑顔を見せた。

 余裕しゃくしゃくのベテランとは対照的なカップルもいた。

 2人で仲良くいすに腰掛けて釣り糸を垂らしていた同高崎市の大学生、高島直人さん(21)は「初めての穴釣り。朝6時から始め、4時間たって2人ともまだ釣れてない」と凍え声。防寒具も貧弱で釣り糸は氷ついて氷柱状態。「これでは釣れるわけがない」と言いたくなったが、それにしても寒そうだった。

 この日の釣果を漁協関係者に聞くと、水門沖付近での250匹をトップに、50~30匹と入れ食い状態の釣果を挙げたベテランもいたという。

 ちなみに記者の釣果は、場所を移動して2回目に掘った穴でやっと釣れた4匹のみ。久々の穴釣りはトホホな釣果に終わった。

 赤城山の寒風にさらされた顔面はひりひりと痛み、自宅に戻ると骨の髄まで冷え切った身体を風呂で温めた。数こそ少なかったものの、夕食で食べたワカサギのフライは絶品だった、と言っておこう。

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