「現代の名工」


毎日新聞 11月10日(水)11時16分配信
 ものづくりの伝統を支える優れた技工を持つ技能者を表彰する「現代の名工」が9日、発表された。県内からは盛岡市の釣りざお製造工、石澤弘さん(66)と、北上市の旋盤工、藤原正栄さん(62)の2人が選ばれた。喜びの声を聞いた。
 ◇「らでん細工」評判に--盛岡・釣りざお製造工、石澤弘さん(66)
 「全く予想外」と驚きつつ、「妻をはじめ周囲の助けがあったからこそです」と感謝を述べる。
 中学卒業後、会社勤めを経て20歳で家業を継いだ。「思うようにやってみろ」と父に言われ、試行錯誤を重ねた。
 転機が訪れたのは15年ほど前、偶然手にした骨董(こっとう)品のかんざしに着想を得て、貝に漆を重ねて鮮やかな装飾を施す「らでん細工」を取り入れた。その腕が徐々に評判を呼び、全国の百貨店を回るようになった。
 材料の竹選びから、完成まで4年はかかる。「中途半端な物は売れない」と、1本の注文にも数本を作ってお客さんに選んでもらう。「私が生みの親なら使う人は育ての親」。丹精込めたさおを手渡すときは、手塩にかけた娘を嫁がせる気分だという。
 忙しい合間を縫って、店で地元の人たちにさお作りを指導している。「誰かが伝えなければいけない」。伝統の継承にも力を注いでいる。【宮崎隆】
 ◇高い技術「8の字溝」--北上・旋盤工、藤原正栄さん(62)
 旋盤工として働き始め42年がたつ。今回高い評価を得たが、「自分だけの力ではなく、会社や周りの人に支えられたからこそです」と謙虚だ。
 高校卒業後、神奈川県の大手電機メーカーの訓練校で旋盤に触れた。「鉄が豆腐みたいに簡単に切れ、おもしろいと思った」という。訓練校で2年間基礎を身につけた後、谷村電気精機(北上市)に就職した。
 入社後、主力製品だった紙幣結束機や菓子梱包(こんぽう)機の部品に8の字の溝を入れる注文を受けた。当時の技術では困難な加工だったが、試行錯誤を重ね完成させた。技術の高さが初めて認められた。
 現在はコンピューター制御によるNC旋盤が主流で、工員の作業は部品の交換が主だ。藤原さんは「機械に使われている気がする」と、今も手動の旋盤を使い、後輩たちにも経験を伝える。「ものづくりの醍醐味(だいごみ)は手作りですよ」と、こだわりを持ち続けている。【安藤いく子】

11月10日朝刊

個人の意見

「現代の名工」って表彰制度があったのですね。