米国南部で魚大量死

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Christine Dell'Amore
for National Geographic News
September 17, 2010

 アメリカ、ルイジアナ州の湿地帯で魚が大量死しているのが見つかった。毎年起こる酸素濃度の低下が原因と見られるが、メキシコ湾の原油流出事故がそれに拍車をかけていた可能性があるという。

 ルイジアナ州プラケマインズ郡のバイユー・チャランドで9月10日、数十万匹もの魚が死んでいるのが見つかった(バイユー: ミシシッピデルタなどの低湿地にある緩流や入り江)。バトンルージュにあるルイジアナ州立大学の水産生物学者プロサンタ・チャクラバーティ氏によると、この時期はメキシコ湾沖で酸素濃度が低い巨大な“デッドゾーン”が毎年形成される時期にあたるという。

 ミシシッピ川に流れ込む農業排水には酸素を大量に必要とする藻類の成長を促す栄養分が含まれ、その藻類が繁殖して酸素を消費することで他の海洋生物が窒息する“デッドゾーン”が形成されることがある。

 チャクラバーティ氏は電子メールでの取材に対し、メキシコ湾の原油流出事故によって原油を食べる細菌が急増し、大量の酸素が消費されたためにデッドゾーンが拡大したと述べた。

 ルイジアナ州野生生物漁業局(Department of Wildlife and Fisheries)の広報担当者オリビア・ワトキンス氏によると、魚が大量死した水域は干潮時に周囲から隔絶されるため、魚が酸素の少ない水域に取り残された可能性があるという。チャクラバーティ氏も、「この水域では魚の大量死は珍しいことではなく、干潮時にメキシコ湾から切り離されれば魚は窒息しただろう。ただし、根本原因はさらに調査を進めなければわからない」としている。

 しかし、ルイジアナ州立大学の魚類毒物学者ケビン・クライナウ氏は、「この魚の大量死の原因を特定できる人がいたとしたら驚きだ」と話す。魚の死体は分解が速く、十分に新鮮なサンプルを入手しにくいため、解剖しても結論が出ないことが多いためだ。さらに、魚の死因として容易に排除できない要因はほかにも数多くあるという。また、魚の死体から何らかの化学物質が見つかったとしても、それが魚を殺すほど有害だったことにはならないと同氏は指摘する。

 プラケマインズ郡沿岸部管理局の責任者P・J・ハーン氏が撮影した魚の大量死の写真の中には、魚の死体の近くを漂う茶色の浮遊物が写っているものがある。同氏はナショナルジオグラフィック ニュースの取材に対し、この浮遊物は原油である可能性が高いと話す。

 しかし、流出した原油が原因で魚が死んだとの見方についてクライナウ氏は、「そう結論付けるのは早計だ」とする。むしろメキシコ湾の原油は複合的な要因の1つであり、農業による汚染物質や湿地の消失につながる引水事業などと合わせて生態系が弱体化し、大量死につながった可能性の方が高い。

「この湿地帯は攻撃に晒されている。人間がこれまでさんざん手を加えて、この沿岸部の環境を大きく変えてしまった。回復力を奪われて、生態系は脆弱になってゆく」。

Photograph courtesy P.J. Hahn, Plaquemines Parish


個人の意見

 同画像がショッキングすぎて、夢に見ました。