「おさかなポスト」1万匹超す


毎日新聞 6月7日(火)11時2分配信
 ◇パンク寸前、経費も 川崎の山崎さん「里親で協力を」
 東日本大震災の余波はペットの世界も直撃している。自宅で飼育できなくなった魚やカメを無償で引き取る川崎市多摩区の「おさかなポスト」に、震災から3カ月近くたった今も被災地からペットの魚などが届けられ、その数が計1万匹を超えた。ポストを管理する川崎河川漁業協同組合総代、山崎充哲さん(52)は「パンク寸前。ボランティアなので運営経費もぎりぎり」と悲鳴を上げている。
 5月下旬、山崎さんは福島県郡山市の被災者から届いた段ボールを開けて目を丸くした。カメが150匹。「被災者が愛情をかけて育てたカメを大事にせねば」と思う一方、さすがに驚きを隠せなかった。
 ポストはもともと、多摩川への外来種放流防止を目的に、飼育を断念した魚を入れてもらおうと多摩区の稲田公園に水槽を置いたのが始まり。山崎さんが麻生区の自宅で引き取り、震災前は約1000匹を飼育していた。
 ところが震災直後、北関東を中心に首都圏各地から引き取りの依頼が殺到した。「水槽が割れ、マンションの下の階に漏れた」。「計画停電で飼えなくなった」など、多い日は約300件の問い合わせがあり、2週間で4000匹が集まった。
 5月に入ると状況が変わり、福島や宮城県などの被災地から集中的に届くようになった。「避難指示でいつ家に戻れるか分からない」。「仮設住宅で大きな水槽を置けず、熱帯魚は飼えない」。届いた生き物はこれまで年間で引き取っていた平均数である1万匹を超えた。餌や水槽の電気代で1日最低2万円はかかり、月の経費は多い時で100万円に達した。しかし「生き物は絶対に殺さない」の信念で全て受け入れている。
 送られてくる魚はコイや金魚が中心だが、熱帯魚やアロワナなどの高級魚も少なくない。山崎さんは「魚と一緒に手紙やお金が入っていることもある。生活を最優先にせざるを得ず、仕方なく手放したものがほとんどだ」と理解を示す。
 ただ、引き取った生物を飼う数百個の水槽で、自宅は足の踏み場がない状況だ。「無償でやっているので、金銭面が特に厳しい」
 届いたペットの里親を募集しており、すでに2000~3000匹は里親として応じてくれた飼い主に渡した。里親になるには入会金1万円と年会費6000円を払ってポストの会会員になることが必要。支援者(一口1000円)や企業スポンサーも募集している。「『被災魚』や『被災ガメ』を飼い主の代わりに飼うことで被災地を支援できる。ぜひ協力を」と山崎さんは訴えている。問い合わせは山崎さん(090・3209・1390)。【倉岡一樹】

6月7日朝刊

個人の意見

 飼えなくなったら引取先を探すなど、絶対に不法投棄だけはやめましょうね。